なかなか評価できるNHKのネット受信料導入を含めた制度改革案

一時期は、ネットに接続できる環境があるだけでNHK受信料を徴収するという極論が出ていたNHK受信料改革ですが、比較的まともな制度になりそうです。

テレビを設置してるのに本当に全くNHKを見ていないのか?

テレビを設置してるならNHK受信料は支払うべきという現行制度は別にかまわないと私は思います。

テレビを持っていながらNHKを全く見ない人が本当にいるのか?という話です。なんだかんだ言って、大きな地震が起きたとき、国政選挙の投開票日の夜はNHKを見ている人が実際は多いのではないでしょうか?

大きな地震などそんなものはごく稀にしかないというのは詭弁でしかありません。

大震災のような非常事態でも正確な情報を伝えられるように、平時から設備や人員の維持にお金をかけているNHKだからこそ民放より信頼できる情報を報道できているので、NHKへの受信料支払いは非常時に正確な情報を手に入れる保険料のようなものです。

それを普段から支払っていないのに、いざとなったら民放より信頼できるNHKから情報を得るというのは「フリーライダー」でしかありません。

ネット受信料は「パソコンやスマホでNHKを視聴するという意思表示をした者」に限定

もし「インターネットに接続できるだけでNHK受信料の支払いを義務付け」が実現するとしたら、間違いなく総務省は問題外の失態を犯すレベルでした。

ですが実際は、「NHKと視聴契約を結んだスマートフォンやパソコンの保有世帯から受信料を徴収する」となっており、パソコンやスマホ用のアプリなどを提供して、そのアプリ中で明示的にNHKを視聴することに承諾という「意思表示」をした者だけがネット受信料を支払う義務を負う仕組みになるようです。

これだったら何の問題もありません。

NHKネット受信料を支払いたくなかったら、そんなアプリを使わなければいいだけの話だからです。

もしNHKがネット同時配信をしている公式サイトを踏んでしまった時点でネット受信料が発生するとしたら、はっきり言ってNHKは単なる馬鹿と断定できますが、さすがにそこまで酷い制度にはならないと現時点の報道から判断できます。

インターネットに接続できるだけでNHK受信料徴収するのは合理的な理由を作るのに無理があった

まずインターネットとは世界に1つしか存在せず、インターネットは事実上米国が運営する中央集権的なシステムです。各国にあるネットワークを相互接続したものがインターネットではないということが重要です。

インターネットが1つしかないのは名称にも表れていて、英語では”the Internet”と固有名詞で表記されます。

インターネットはARPAという、米国の国防総省が設置している国防高等研究計画局(DARPA)の前身が軍事研究開発の一環で作り出したARPANETそのものです。完全に米国の軍事研究の成果であるARPANETが民間運営に移管されてできたものなので、日本には日本独自のインターネットがあるわけではありません。インターネットは米国が作り出したものが世界に1つあるだけです。

つまり米国が作ったインターネットから回線をひかせてもらって、各国はインターネットを間借りしているわけです。インターネットというのは米国から借りているシステムだというのが技術的に正しい認識です。

だからキューバというのは米国と国交断交状態だったために、毎月20ドルの月収しかないのにもかかわらず1時間インターネット接続するのに4.5ドルもかかっていた国です。

米国と関係改善してから半分以下に値下がりしています。米国を敵に回している北朝鮮でインターネットが輻輳して不通状態になったように、米国を敵に回してインターネット接続は成り立ちません。

さすがに総務省の前身の1つは通信行政を所管し日本電信電話へ指導を続ける旧郵政省ですから、この辺のことはよくわかっています。

インターネットに接続できるだけでNHKネット受信料を取るというのは、「そもそもインターネット自体が米国から間借りしてきているものなのに、インターネットに接続しているだけでなぜNHKが料金を取る根拠が生まれるのか?米国が料金を取るのだったらまだしも」という話になります。NTTなどの通信業者に支払っているのはインターネット回線の間借り手数料だと言えます。ですがNHKはコンテンツ業者であり、インターネットというインフラを提供している側ではありません。それは米国が提供しているものです。

だからインターネットに接続できるだけでNHKのネット受信料が発生するというのは、法理を組み立てる上で必ず無理が発生します。それを屁理屈をこねてインターネットに接続できるだけでネット受信料を徴収するという法令ができるとしたら、それは賭博は違法なのにパチンコは合法というレベルのものがまた1つ誕生することを意味します。

現在の各報道を見ている限りは、インターネットに接続できるだけでは足りず、明示的にNHKの報道をネット受信すると意思表示した世帯だけに受信料の支払い義務が発生するようです。これなら私は全然かまわないと思っています。