トランプ政権下の株はiシェアーズ米国高配当ETFを買うのがベスト

私はトランプ大統領の政策を予測して金融資産運用の投資戦略を立てることをおすすめしません。なぜなら彼は簡単に翻意する蓋然性が高く、政策の一貫性を期待できないからです。

それならトランプ大統領がどの政策を取ってきても利益を上げられるような商品選択をしていけばいいわけです。

結論から言うと、トランプ政権下で最もおすすめな銘柄はブラックロックが設定しているiシェアーズ米国高配当ETF(モーニングスター配当フォーカス)だと言えます。

以下、他のアセットクラスが適切でない理由と、高配当が望ましい理由の順序で記載します。

日本の高配当株ETFは及第点だが、日本株では米国が保護貿易になるリスクを回避できない

日本に居住し続ける場合には、第一義的には日本株を買うべきです。長く暮らす自国の経済に連動した金融資産で運用することが最もスマートだからです。

ですが、日本の経済構造は日米の軍事同盟の恩恵を強く受けており、米国の政治動向が日本の経済動向に直結します。政経分離などという言葉を、チャイナとの関わり合い方という文脈で日経新聞やテレビ東京がひたすら唱えていますが、あれは虚言です。政治と経済は密接不可分であり、末川博著の「法学入門」によれば「政治とは経済の手段」です。

トランプ政権下では日米軍事同盟の動向が日本の株式市場に大きな影響を与えます。ならば強く相関している日米両方の株を買ってもリスクヘッジになりません。どちらか片方でもいいわけです。ならば米国が保護貿易に舵をきるリスクで潰れる可能性のある日本株より、保護貿易で恩恵を受ける米国株を持っている方が手堅いと言えます。

日本軍需株を買うにしても、トランプ政権が日米同盟現状維持、日本の防衛費増額求めずなら何も変わらない

トランプ氏は在日米軍撤退を選挙期間中にちらつかせてたせいで日本の左翼マスコミがひたすら不安を煽っていますが、撤退するわけありません。むしろ日本が米軍に出ていってくれとお願いしたところで絶対に出ていかないでしょう。これはマイケル・フリン氏が国家安全保障問題担当大統領補佐官に指名されたことからもわかります。

あるとしても思いやり予算を若干増額する程度にとどまります。トランプ氏は、オバマ政権で削減された米軍予算を大幅に増やし軍拡をすることを明言していることからも、むしろ在日米軍は強化されると言えます。

そうなると、トランプ氏当選のときに大幅上昇した石川製作所、豊和工業、東京計器といった企業はさほど上がる要因にはなりません。

日本の防衛費を対GDP比でどのくらい上げるかどうかというところなので、これを米国が求めてくるかどうかというところにかかっています。求めてこなかったら現状維持で何も変わりません。

一方で、経済面ではトランプ氏は日本を徹底的にいじめてくるでしょう。日米FTAは農協や自動車産業にとって過酷なものになります。ですが先程説明した通り安全保障面では現状維持です。

米高配当はJリートより20ベーシスポイントも利回りが高い

金融商品の利回りというのは毎日変動します。だから利回りの数字そのもので追っかけるようなことは普通しません。金融商品の利回りというのは、ベンチマークとなる無リスク金利+何ベーシスポイントかどうかというリスクスプレッドで比較します。

例えば日本の場合、自国通貨は円ですから円建ての国債が無リスク金利になります。この無リスク金利が上がれば株の配当利回りやJリートの配当利回りもより高いものが要求されますが、リスクスプレッドはさほど動きません。少なくとも毎日見直しするものではなく、ある程度大きなレジームスイッチがあったら見直すくらいなものです。

Jリートは高配当の日本株より30bpほど利回りがいいですが、高配当の米国株はJリートよりさらに20bpも利回りが高くなっています。

2番めに買ってはいけないのは米国リート これから先下落基調

米国のリートについては、以前なら米国株の口座を開いたり、信託報酬ぼったくりの上場していない公募投資信託を買うしかありませんでしたが、現在はブラックロックのダウ・ジョーンズ米国不動産リートETFが上場しているので、円建てでそこそこ低めの信託報酬で米国リートを買うことができます。

ですが、私は米国リートをトランプ政権下で買うことをおすすめしません。

なぜなら米国の金利は、今後は上昇圧力が濃厚だからです。リートは借り入れをして不動産を購入しているので金利上昇はマイナス要因です。さらにリートは値上がり益ではなく、利回りを重視して取引される商品であるため、金利が上昇するとどうしても値下がり傾向になります。なぜなら賃料収入は上昇も下降もしない硬直性があるからです。

リートは普通の株とは違って、一本調子で綺麗に右肩上がりを続けることはありません。S&P500やラッセル2000、ダウ平均を見てみればわかりますが、リーマンショック以降綺麗に右肩上がりです。しかし米国リートはそうなっていません。

なぜなら不動産というのは賃料収入はほぼ一定であるため、利回りを一定に保つために価格が平均回帰する定常性が強く、株や為替のように非定常性の強いものとは異なります。よってリートはsincos波のように波打って変動します。トランプ政権下では米国リートの利回りは上昇基調になり、それは米国リートの価格自体が下落基調になることを意味します。

1番買ってはいけないのは米国ハイイールド債と米国債ファンド

トランプ政権下で最も買って行けないのはハイイールド債です。米国債も同様です。両方とも等しく債券だからです。特にフィデリティUSハイイールドなどは絶対買ってはいけません。

債券というのは日米ともに今は絶好期です。こんな低金利ほど債券にとって好都合なことはありません。ですがこんな状態が長く続かないことは自明です。金利が上がれば資金は株に流出し、債券価格は下がり利益のあがらない閑散相場になっていきます。

最近、米国債(treasury)残存7~10年のETFが上場ラッシュですが、これも今から買うようなものではありません。以前から持っていた米国債を売却し益出しするような段階です。

2015年12月頃までは、「まだまだハイイールド債は買い」という愚かなポジショントークを見かけましたが、それから1年位たってすっかりハイイールド信者は沈鬱ムードです。今はハイイールド債保有者は息をしていない状態です。今後更に下がります。絶対に買ってはいけません。

問題外は日本の債券ETF 利回りがマイナスな上に手数料負けするのでトータルでマイナス確実

信託報酬で手数料負けして結局はマイナスの利回りという素敵な状況になっているのが日本国債に投資するETFや上場していない投資信託です。

もし買うのなら、財務省が発行する個人向け物価連動国債を直接買い付けるぶんにはいいと思います。物価が下がっても元本割れしないという民間企業には作れないチート商品だからです。

たとえETFであっても投資信託を通して日本国債を買うのはNGです。信託報酬で運用会社と販売会社にがっぽり手数料を搾り取られて、こんなに低い国債利回りでは手数料を回収できません。

米国株であってもS&P500やダウ工業株など大型株指数は薦めない 大型株であるアップルが不振

米国株がおすすめだと上述しましたが、米国株なら何でもOKというわけではありません。

トランプ政権はIT企業重視をやめようとしています。それはTPP脱退と同義です。

オバマ政権がTPPを推進したのは、TPPは自動車産業は切り捨てるものの、IT企業のソフトウェアやサービスを米国以外の国に売りつけるのに好都合だからです。米国の自動車産業が壊滅しても、代わりにIT企業が儲かるので、トータルとしてみれば米国のGDPや税収にとってはプラスなのでTPPを推進していました。

ですがトランプ氏は第二次産業たる製造業を大切にしようとしています。これはサッチャー英首相が、第二次産業を切り捨てて第三次産業に傾斜したことが、英国の衰退を招いたとトランプ氏は認識しているからです。

だからさっそくIT株は値下がりしています。米国では第三次産業のIT企業と第一次産業の農家がTPPを熱望し、自動車産業などの第二次産業がTPPに反対するという構図になっています。

よって大型株指数であるS&P500やダウはアップル、MS、Googleなどの比率が高いですから、これらの指数を買っているとトランプ政権の恩恵を受けられないでしょう。

ラッセル2000のような小型株指数は上がるときは大きいが下がるときも大きい

小型株効果はファクター投資でも用いられる3ファクターのうちの1つです。小型株が上がるときには大きいですが、逆に株価暴落のときに最も損失を被るのは小型株です。

リーマン・ショックが起きたのは、ブッシュ政権になった2001年から非常にボラティリティの低い好景気を享受したあとの最後の最後です。共和党のトランプ政権末期でも同じようなショックが起きないとも言い切れません。

そのようなときに小型株のエクスポージャーは極めて大きな損失になります。

高配当株は株価暴落時に強い 企業の純資産に比べて時価総額が割安の銘柄が選ばれるから

株価暴落時の損失は割高株ほど大きく下がります。つまりPBRが高い銘柄が下がりやすいです。

例えば日本で言えばミクシィは非常にPBRが高い割高株ですが、こうった株は下がるときには、企業会計だったら減損処理をするレベルで大幅下落します。

逆に下がりにくいのはPBRが低い銘柄であり、例えばみずほフィナンシャルグループのようなPBRが0.6というボロ株同然のものは株価暴落時でもさほど下がらないでしょう。

高配当株というのは特段企業の配当性向が高いわけではありません。単に貸借対照表の純資産の額のわりに時価総額が低いから、「年間配当金/株価」の配当利回りが高くなりやすいだけです。

高配当株は割安株とニアリーイコール 事実上バリュー・ファクター投資である

現在ようやく「スマートベータ」や「ファクター投資」が文系投資家の間でも注目されてきていますが、これは数学的には本当に簡単です。単に重回帰分析をしているだけです。

3ファクター投資が広まる以前に利用されてきたのはCAPMという市場ポートフォリオの感応度であるベータと、アルファと呼ばれる個別要因で株価の騰落を説明するというものです。

y=ax+b

これに単回帰させるだけです。ですがこれだけだと説明できない騰落があったので、説明変数を増やして単回帰の代わりに重回帰分析を行います。ベータに加えてバリュー効果、小型株効果を加えて3ファクターにしたのが現在よく用いられているスマートベータの理論的背景です。

その中でも特に優秀だと実証されているのがバリュー効果です。バリューというのは財務諸表の純資産を時価総額で割ったものであり、これはPBRの逆数になります。

このバリューが高いもの=PBRが低いものを選択したポートフォリオは他のスマートベータを大きくアウトパーフォームしています。

スマートベータには他にも、人材・設備投資への積極度を表すファクター、収益性(ROE)ファクタを加えた5ファクターモデルや、モーメンタムファクタなど様々ですが、特にその中でもバリュー効果に着目したバリューファクタは別格で優秀なのです。

ETFでは人材・設備投資に積極的な株を集めたものと、ROI重視のものを集めたものはありますが、バリューファクタ投資を打ち出したものはあまりありません。

それでも、バリュー株というのは高配当株とほぼクラスが一致しているので、高配当ETFがベストです。ブラックロックのiシェアーズ米国高配当ETFは信託報酬がたった0.08%だというのも好条件です。米国の高配当はブラックロックくらいしか上場してません。

私は米国株を薦めますが、日本株の高配当をやるにしても野村や日興が出してる日本高配当ETFは信託報酬が0.32%もありぼったくりレベルです。もし日本の高配当株をやるとしたらiシェアーズのMSCIジャパン高配当利回りETFが信託報酬0.19%ですからこちらのほうがいいでしょう。