カジノ法案が衆院本会議で可決されました。これで衆院は通過し、あとは参院での審議になります。
自民党と日本維新の会の賛成に加えて、党議拘束をはずした公明でも現職の国土交通大臣である石井啓一氏と元国土交通大臣である太田昭宏氏が賛成しました。結果的に公明党は22人が賛成し、11人が反対を投じました。棄権は1人、欠席は1人です。
現職の閣僚と元閣僚が反対するとなると安倍政権に反旗を翻すに等しいですから、この2人が賛成に回るのは一番確実視されていました。
民進党は党内に40人もの賛成派を抱えているため、反対の党議拘束をかけると民進党が分裂すること間違い無しなので「退席」というサボタージュに出ました。
共産党は出席して反対を投じました。この行動をみていると民進党より共産党の方がまだ政党として存在している意義があると言えます。
集団的自衛権行使にも賛成していた太田昭宏元国土交通大臣はカジノ推進法案に賛成 現職の石井啓一国土交通大臣も賛成 反対派の筆頭格、井上義久幹事長は反対
どうやら山口那津男代表としては、賛成として党議拘束をかけたかったが、井上義久幹事長が強硬に反対したため仕方なく党議拘束をはずしたのでしょう。井上義久幹事長が党議拘束を外すことを主張している際、山口那津男代表はずっとうつむいて黙っていたようです。
今回のカジノ推進法案より圧倒的に難問題だった、集団的自衛権行使容認の閣議決定の文言を決めるときでもなんとか全員賛成できるように調整したのにもかかわらず、今回割れてしまったのは本当に残念だったのでしょう。
反対を投じたのは反対の音頭を取った井上義久幹事長です。逆に賛成したのは第2次安倍内閣から国土交通大臣を務めていた太田昭宏議員、現職の国土交通大臣である石井啓一氏です。さすがに元閣僚と、現職の閣僚という立場では安倍政権の方針に反対はできないでしょう。
井上義久幹事長が反対できたのは、幹事長というのは議会としての公明党のトップであり、議会としては反対しても、行政としての賛否とはまた別な話だからです。
自民維新が賛成、民進党が退席したことで出席議員の2/3を余裕で超えた
憲法改正の発議は出席議員数ではなく「総議員数」の2/3が必要ですが、衆院での法案再可決においては「出席議員数」の2/3があれば足ります。
よって参院で否決されても、再び衆院で民進党が退席してくれれば自民と維新のみで法案の再可決が可能です。
これほど年金改革法案も、TPP承認案も、自民公明維新が賛成したので余裕で2/3を超えています。
またカジノ推進法案も公明党が賛否われましたが、これまた余裕で2/3を超えています。
「出席議員数」どころか、公明党からもなんだかんだいって22人も賛成したので、自民公明維新をあわせて「総議員数」の2/3をも超えたという圧倒的な賛成多数で可決されました。
これほどの圧倒的多数で、意見がわれて紛糾している法案が可決されることは以前はあまりなかったことです。2/3以上が賛成しているのにわずか1/3の民進共産が審議を意図的に遅延させ妨害しているのは、日本は多数決型民主主義を採用している国だというのを理解していないようです。
カジノ推進法という議員立法を成立させることで政府にボールをなげて、次は政府側でカジノ法案を書いて議会に提出する
そもそもカジノ推進法案を成立させたあとで、1年以内をめどに政府が改めてカジノ法案を作成し議会に提出するという煩わしい手続きをなぜ踏むかという指摘があります。
今回のは日本政府手動でカジノを設置するのではなく、あくまでも議員の有志による議員立法でカジノ設置への道をひらくことで、政府への批判を和らげる目的があります。
日本の場合は米国と違って官公庁の職員は新卒で任用されてからずっとその分野で働くのでその道のプロです。米国は政権がかわると課長級以上が入れ替わるので、どちらかというと議会の方が強く、議会が共和党民主党お抱えのシンクタンクに法案を作らせて提出しているわけです。
でも日本の場合は、日本最大のシンクタンクは三菱総研や野村総研ではなく、中央省庁そのものです。だから省庁の職員が法案を作成し、それを内閣提出法案として国会で審議させて成立させています。
今回のカジノ推進法案はめずらしい議員立法です。中身は非常にシンプルで、カジノを合法化することと依存症対策をすること、1年以内に具体的な法律を成立させることを箇条書きで書いてある程度の薄っぺらいものです。中身が詰まった法案は、このカジノ推進法案が成立してから、所管する省庁が作成します。とはいえどこが所管するかさえ決まっていません。決まらなかったら、いつものように政治色の強い内閣府にぶら下がる形になってしまうでしょう。私は警察庁がカジノ法を所管するのがベストだと思っています。