任天堂とPS4のゲームの違いに見る任天堂とAppleの問題

私は社会人になる以前に高校生になったころからテレビゲームというのをあまりやらなくなったわけですが、最近はYoutubeでゲーム実況を見ることでゲームをやった「ふり」ができるようになってしまいました。

最近みてて思うのはアンチャーテッド4やメタルギアソリッド5などのグラフィックの精巧さです。両者ともにPS4またはPS3プラットフォームのゲームであり、ゲームのコア層向けと言えます。

 

一方で対照的なのは任天堂のゲーム機WiiUのソフトです。例えば私が今最も面白そうだと思っているのはスプラトゥーンなど。一見ゲーム初心者向けの簡単なものに見えますが極めるとなると奥が深い難しいゲームです。あとはマリオカート8やマリオメーカーでしょうか。

 

このPS4とWiiUの任天堂ソフトの間には決定的な違いがあります。

PS4のゲーム、例えばアンチャーテッドシリーズなどは「一度ゲーム実況をみたらそれでお腹いっぱい」になってしまうことです。

つまり映画を観ているような感じであり、他人がプレイしているゲームであってもそれを最初から最後まで見てしまうとそれで満足してしまうわけです。ストーリー重視のためストーリーがわかればそれで満足ということになってしまうのでしょう。

一方で任天堂のゲームというのはゲーム実況を観ていると欲しくなってきます。欲しくなってくるだけであって実際は持っていないのですが、もし買うとするならPS4のアンチャーテッド4やメタルギアソリッド5よりWiiUを買ってスプラトゥーンを買うと思います。

これは他人のプレイを観ているだけでは満足しないということです。自分でプレイしてこそ楽しめるという側面が強いのだと思います。

それでもゲーム制作側としてはどちらがお金がかかっているかというと間違いなくメタルギアソリッド5やアンチャーテッド4でしょう。

特にメタルギアソリッド5にいたっては開発コストが高すぎてコナミから打ち切りされたという話もあるくらいです。アンチャーテッド4もYoutubeでゲームを見てみればわかります。あれだけのCGを作ったりムービーを作ったり声を充てるのに莫大なコストがかかっているのは一目瞭然です。

それでも私のようにYoutubeで一度みてしまうとあまり買う気にはなれません。どちらかというとPS4よりは開発にあまりお金がかかってなさそうな任天堂のゲームの方が買ってみたくなるわけです。

これはWebコンテンツとも似ていて、どちらかというとPS4のゲームはスタティック(静的)なコンテンツです。ストーリーを映画を通してみているようなものであり、何度繰り返しゲームをやっても同じストーリーが展開されます。

一方で任天堂のゲームというのはダイナミック(動的)なコンテンツです。ゲームプレイヤーがコントローラーを通してどう働きかけるかによってゲームが全然変わってきます。同じゲームでもプレイヤーによってまったく違うゲームになります。そのためゲームの遊び方によってゲーム機が打ち返してくる結果が異なるため、他人が遊んでるのを眺めてるだけでは満足しないのでしょう。自分でゲームをプレイしていても毎回違う展開が楽しめるわけですから、なかなか飽きがこないといったことにもなるわけです。

そう考えると任天堂のゲームというのは小学生から大人まで幅広い人を対象にしており、かつやってもなかなか飽きないようにできており、他人がプレイしているのを観るだけでは飽きたらず自分でも欲しくなるという、商業上とても好ましい属性を兼ね備えています。

一方でアンチャーテッド4のようなゲームはあまり小学生にプレイさせたいとは思わないゲームであり、ターゲット層が絞られてしまっています。かつ一度やったらそれで満足してしまったり、Youtubeでゲーム実況を見てみたらそれでも満足して購買意欲に結びつきにくいです。

私はどちらかというと、PS4のような活用が難しい高性能ハードウェアの性能を引き出すことに努力しているゲームの方が情報技術の発展上好ましいと考えています。できればコンピュータの高性能化がグラフィックの美しさという目で見える結果として現れるPS4の開発陣が報われて欲しいと思っています。

ですが実際お金になるのはおそらくそこまで高性能なコンピュータを必要としない任天堂のゲーム機やソフトという現実があります。

これはどの分野にもあるジレンマだと思います。「ハイスペックなものを作れば売れる」というものより、「実際売れているものが優れているんだ」というAppleのiPhoneが示した価値観のほうが現在は支配的です。

おそらくPS4のようなゲームは株主にとってはあまり嬉しくないでしょう。ですが研究者のような文化に身をおいている人はPS4のようなゲームこそ伸びて欲しいと思っています。研究者は商業主義ではないからです。

これは2007年頃の任天堂、Apple全盛期から現在まで続く価値観でしょうが、最近少しずつ「最先端の技術を搭載しているものが良い」という流れに少し戻ってきているように感じます。ゲーム機でいうならばWiiUよりもPS4の方が勢いがあります。FF7のRemakeもキラーアプリケーションになるかもしれません。自動車業界で言えば富士重工=スバルみたいなのがPS4です。売れるものが正義というのは重々承知しているので一応理解はしますが、そうではなくスバルのように売上高はトヨタより少なくても技術者集団としては誰にも負けないという側が最近少しずつ盛り返しているように感じます。

結局それは技術を軽んじて売れることを優先しているとそこで停滞している状態が続き、いつの間にか抜き去られていたという状況と似ています。任天堂の最近の不振も、Appleの不振もそこにあるのではないかと思います。今一度ブランドや見栄えから離れて、アセンブリレベルのマイコンプログラマだった岩田さんのような技術者肌が今のAppleや任天堂の再興に必要なものだと言えます。