長期金利マイナスは国民にとってプラス マイナス金利を叩くマスメディアの嘘

多くのマスメディアが10年国債利回りのマイナス化を「国民にとって良くない」とネガティブに報道しています。

彼らの言い分はこうです。

国民にとって良くないとして報道されている内容:

  • 銀行預金の金利が下がる
  • 銀行のATM手数料が増えるかもしれない
  • MMF(証券口座で買える元本確保型の商品)の販売中止

デメリットだけを強調し、マイナス金利のメリットは住宅ローン金利が下がることだけだと言います。

実際はメリットの方が多く、デメリットのほうが大きいというのは嘘であるということを解説します。

長期金利がプラスだと国民の税金で金融機関を養ってる状態

銀行は預ったお金を国債を買うことによって運用しています。例えば1%の利息を銀行が国から受け取ったとしましょう。

すると銀行はそのうち0.9%を自らの懐にいれて、のこり0.1%を国民の銀行口座の普通預金の利息として支払うわけです。

さて、この国が銀行に支払っている1%の利息はどこからでてくるのでしょうか?

これは国民が支払った国税が財源になっています。

現在国の税収は54兆円です。これは国民が納めた国税です。そして国債の利払いは23兆円もあります。この23兆円は銀行や生命保険会社といった、国債を購入している金融機関に対して、国が支払っているものです。

つまり銀行や生命保険会社は、国債を買っているだけで国から23兆円もの援助があるのと同じなのです。

その23兆円の元をたどると、それは国民が納めている税金だということです。つまり税金で銀行を養っているのが「プラス金利」です。

国民が銀行にお金を預けても少しの利息しかつきません。そしてこの利息は実は私たち国民が納が税金が、国民→財務省→銀行→国民の預金利息、と戻ってきただけなのです。途中で銀行が中間搾取していますから、利息が少なくなるということはむしろ銀行による税金の中間搾取が少なくなるということで好ましいことなのです。

マイナス金利だと国が120兆円借金しても110兆円だけ返せばいい

では10年国債の利回りがマイナス、つまり長期金利がマイナスになるとどうかわるでしょうか。

結論から言うと、税金を納めている国民が得をして、国債を買っている銀行が損をする構図になります。

現在国債の発行というのはオークションで行われています。

例えば国が100兆円の国債を年率1%の利払(クーポン1%)で発行しようとしているとしましょう。

それを買いたいと思っている銀行や生命保険会社が入札します。そのとき入札がオークション方式で行われるのです。

簡単のため単利で考えるとすると、もしこの国債を100兆円で買うことができたら、利回りは1%になります。でも、もっと低い利回りでもいいから買いたい金融機関がいれば、利回りはどんどん下がっていきます。

たとえば110兆円で買う銀行が現れたとします。この場合、(単利で)利回りは0%になります。

0%というのは儲かりもせず、損もしない水準です。

つまり、国債をこの110兆円より高い価額で金融機関が買ってしまうと、金融機関が損をすることになります。

例えばある銀行が国債を120兆円で買ったとしましょう。

そのとき、国(財務省)には120兆円のお金が払い込まれます。銀行は120兆円を国に支払うということです。

そしてこの銀行は毎年1兆円の利息が国からもらえます。10年国債だとこれが10年続きますから、利息で10兆円。そして最後には100兆円が戻ってきますから、合計で銀行は10年間で国から110兆円もらえます。

でも待ってください。銀行は最初に国債を120兆円も支払って買っているのです。でも今後10年で貰えるのは110兆円。10兆円損していますね。これが10年債利回りのマイナス、長期金利のマイナスの効果です。

これは好ましいことです

なぜなら、国は120兆円銀行から貰っておきながら、110兆円しか返さなくていいのです。銀行が10兆円損するのと反対に、国は10兆円得してます

つまり国税を納めている国民が得をしているのです。プラス金利なら国が100兆円借金したら、10兆円の利息をつけて、合計110兆円を銀行に支払わなくてはいけない。この10兆円の利息を誰が支払っているのかって言ったら、税金を支払っている国民です。

でもマイナス金利なら120兆円借金しても110兆円だけ返せばいいのです。これは国民の税負担を下げます。マイナス金利は住宅ローンの金利が下がるだけでなく、国債の負担も下がる。つまり国民にとってはプラスなのです。逆に、銀行にとっては受難の時代と言えるでしょう。

マイナス金利で銀行が苦しくなる?むしろ国債の含み益がすごくて高笑い状態です

さきほどの銀行が損をして国民が得をするというのは、これから先発行される国債のことです。

ではすでにもう銀行が持っている国債はどうなるか。実はすでに国債を持っている銀行は国債の価格が暴騰していてウハウハ状態です。

金利が下がると国債の価格が上がります。つまり今銀行は昔買った国債の含み益がものすごく出ている状態です。

この国債を売ることもできます。これを「益出し」といいます。マイナス金利のおかげで大きく値上がりした国債を売って利益を確定するわけです。

しかも銀行は別に国債を買うのが義務ではありません。日銀が新規発行の国債を買い占めてる以上、企業に貸し付けたり社債を買ったり株を買ったり外国証券を買ったりして運用すればいいのです。ですが、銀行は長く日本国債を買うだけという楽な運用に頼りっきりだったため、そういった運用能力がなくて困っているわけです。ある意味、金融機関でありながら国債運用というぬるま湯で楽をしてきて、他の資産での運用技術を磨いてこなかったツケが回ってきただけであり、自業自得といえるでしょう。

まとめ:金利が高いと銀行が得をして国民が損をする マイナス金利だとこれが逆になる

銀行は金利の中間搾取を行って稼いでいます。先ほど説明したように、この金利の財源は我々国民が支払っている税金です。

たとえばバブル経済期のように預金金利が7%あったとしても、銀行はそれ以上に中間搾取をして稼いでいるのです。

でもいまみたいに低金利だと、中間搾取しようにも、元になる国債の利回りが低すぎるわけですから中間搾取もできません。

つまり国民にとって住宅ローンの金利が下がるだけなく、低金利は正義なのです。金利が高くて得するのは金融機関、損をするのは国民。マスメディアの嘘に騙されないようにこれは覚えておくべきです。