日経平均先物価格から読み解く森友学園問題の推移と今後の動向

世の中には数多くの経済指標がありますが、株価より先行して動く経済指標はありません。株価より先行して動く潜在的な量があったとしてもそれは科学的に定量的には観測できないものです。もしそのような指標があったとしても裁定が働くので、結局は株価と同じか株価より遅行する指標に落ち着いてしまいます。

私はチャート分析なんてほとんど信用していません。数学的に有意性を説明できないからです。ただし、数学を使わず数理的に分析していない投資家が大半である以上、彼ら文系投資家の”折り込み”や”考え”がどのようになっているか判断する上ではチャート分析は有効です。

 

現在、衆参予算委員会で予算と全く関係のない話題でもちきりですが、その話題の一つが森友学園問題です。

2月15日の衆院財政金融委員会で森友学園問題が表面化してから株価は低調であり、それ以前からも株価は米国に比べてさえないものでした。

株価は今回の問題発覚を明確に織り込んでいたと言えます。

安倍内閣退陣や自民党惨敗が織り込まれると株価は確実に下落するので、まだ表面化していない問題でも、潜在的に政治行政が抱えている問題を株価は即座に織り込んできます。

3月1日の鴻池議員の会見で大きく潮目が変わる

転機が訪れたのは3月1日です。3月1日の引け後に鴻池議員がぶら下がり取材に応じてざっくばらんに記者の質問に答えました。

この中で、鴻池議員が森友学園から陳情を受けていたことを明らかにしました。鴻池議員はその上で依頼を断ったとしましたが、森友学園の陳情先が安倍首相ではなく鴻池議員だったことが判明したわけです。今回の問題を、安倍首相と森友学園の一対一の問題にしたがっていた民進党と共産党にとってとんだ邪魔が入ったわけです。

この問題は鴻池議員と森友学園の間に具体的やり取りがあった証拠もでてきたことで、証拠が何一つ出てきていない安倍首相と対照的になりました。

反社会的勢力の共産党は「鴻池議員の他に関係する議員がいることが予算委でわかった」と根拠のない願望発言していましたが、これは安倍首相から鴻池議員に焦点をそらされるのを嫌がっているためです。

この鴻池議員が記者の取材に応じた直後から一気に株価は上昇し始めました。

縦のグレーの点線が2017年2月15日の衆院財政金融委員会で森友学園問題が表面化した時期です。右側の大きく上昇している部分が3月1日に鴻池議員が森友学園から陳情を受けていたと表明した後です。

 

さらに長期でみてみると、今回の株価上昇は過去最高値の天井付近まで来ていることがわかります。

下の図は2016年4月頃から2017年3月2日までの日経平均先物指数です。

縦にグレーの点線が入っている部分が2017年2月15日に森友学園問題が初めて議題に上った日です。

森友学園問題が表面化してから株価は三角持ち合いのまま下落を続けていましたが、3月1日夕から3月2日朝までの間に大きく上昇し、3月2日の日経平均株価始値は前日引値から大きくジャンプしました。

今回の問題発覚以前の水準よりも高くなっています。

米国株はこのような三角持ち合いにならず上昇を続けていますが、日本株がこのように堅調ではないのは政治リスクを織り込んでいるからです。米国は大統領制なのでトランプ大統領は国民にだけ責任を負っていて議会に対して責任を負っていないので辞任させられることはありませんが、日本は議院内閣制なので辞任があり得ます。

株価が低迷し始めたら辞任を折り込み、大幅高になっていったら株価はそのようなことを全く織り込まなくなっていることを意味します。

安倍首相が辞任しても急に株価は下落していない

とは言え何が起こるかわからないのが永田町です。安倍政権が2021年まで続いて欲しいというのと、株式という個人資産の問題は完全に切り離しておく必要があります。

2002年2月から続いたいざなみ景気(第14循環)2007年7月20日には始値で18,260円を付けています。これがいわゆるリーマン・ショック前の最高値でありピークです。リーマン・ショックが顕在化する2008年までの間、この2007年7月をピークとして株価は徐々に下落していきました。

そしてそれから2ヶ月後の2007年9月26日に第一次安倍改造内閣退陣です。

この直後の2007年9月28日の日経平均先物の始値は16,300円です。この前後でも急激に変動せず、徐々に下落していっているだけなので、すぐ売却すればほぼ無傷で手仕舞うことができたことになります。

つまり第一次安倍改造内閣が退陣することが発表された2日後でも十分売却タイミングとしては間に合っていたわけです。これを2008年まで持ち越した人は大損だったでしょう。

今は米国株価が堅調なので基本的には上向きです。あるのは日本の政治リスクです。とはいっても株を売却するのは安倍内閣が退陣することが確定してからでも遅くないと言えます。

また2007年のチャートを見てもらえるとわかると思いますが、2007年7月に株価がピークをつけてから安倍首相が辞任発表をするまでの間は日経平均株価が2000円ほど徐々に下落しています。急落ではありません。少しずつの下落です。

このとき株価がゆっくり下落していたのは安倍首相辞任を株価が織り込んでいたということです。

どんなに遅くとも2020年代には安倍首相は勇退します。入口があれば必ず出口もあるので、株の売却タイミングはどのような政治リスクを今の株価は織り込んで低迷しているのかを考えなければなりません。森友学園の野党追求が失敗に終わったかどうかは株価を見ていればわかります。特に流動性が高い先物価格が参考になります。

3月2日時点では、前日の鴻池議員の会見によって大きく潮目が変わり、日経平均先物が2万円を超えれば野党は完全に”敵失”を逃したことになります。