2017年2月10日安倍首相訪米、日米首脳会談の主役は日米FTA

安倍首相が2017年2月9日に夜に米国へ向けて日本を出発し、2月11日に日米首脳会談が行われます。

トランプ大統領と直接会っての会談は、2017年1月27日にホワイトハウスを訪問して会談した英国のメイ首相が一人目、米国と軍事協力を行っている中東の重要国ヨルダンのアブドラ国王が二人目。そして安倍首相が三人目となります。

たっぷり時間をとるために週末会談を選び2泊3日の予定であり、さらにフロリダ州にあるトランプ大統領個人の別荘に招待される予定です。公的なホワイトハウスだけでなく、再び私邸に案内することで「公私共に盟友」をアピールするのは小泉ブッシュ政権時のようです。

またフロリダ州への移動の際は、通常は別行動を取って安倍首相は本来日本の政府専用機で移動するものですが、米空軍(U.S Air Force)が運用する空軍機の筆頭とも言えるAir Force Oneにトランプ大統領と同乗して向かうようです。

これは安倍首相が米国の原子力空母に乗艦したのと同等かそれ以上のレベルの高さです。横須賀が母港の原子力空母は、戦時中になると第七艦隊の作戦司令本部になります。つまり米海軍第七艦隊の本部は原子力空母の中に存在するということになり、海軍の中枢に外国首脳である安倍首相を案内したことは通常なら考えられないことです。

さらに米国の政府専用機エアフォースワンは日本と同じく空軍が運用していますが、エアフォースワンにも戦時中の作戦司令室を備えています。

見た目は旅客機ですが、パイロットは米空軍の軍人であり機体の所属も空軍です。つまり安倍首相は米空軍の軍用機の筆頭格に乗り込むわけです。

これは識別番号(コールサイン)であるエアフォース(Air Force:空軍)ワン(One:1)が空軍機番号1を意味しているからもわかります。

米空軍は戦闘機から爆撃機まで多数の空軍機を保有していますが、その「1番目」がエアフォースワンです。米軍の最高司令官はトランプ大統領ですから、自分たちの上官を守るのが最優先なので当然「1番目」になります。

海軍の原子力空母、空軍の軍用機のように、軍というのは米国でも国家の中枢・根幹そのものです。同盟国であっても「原子力空母やAir Force Oneは米国そのものを意味する場所だから、いくら仲が良くても入れることはできない」という一線があります。安倍首相は既に米原子力空母に現職首相として乗艦しましたが、今回もそのようなシビアな場所に招かれているということです。

これは軍事・安全保障がよくわかっている人ほど、歓待のレベルの高さが理解できます。

日米は対シナ強硬で一致してるのでその点は問題なし

シナの狙いは”元”という通貨を米ドルに代わる基軸通貨にすることです。それは米国が絶対に譲れない一線です。それにようやく気づいたからこそ軟弱外交のオバマ政権でさえ対シナ強硬に舵を切りました。

米国のドルが基軸通貨であることは、米国債を大量に保有する日本にとっても利益であり、ここは日米共通の利益です。利害が一致している以上、対シナ強硬については何の問題もありません。

問題となるのは利益相反になる日米FTAです。

初の日米首脳会談の段取りは日米FTA交渉入りを安倍首相が認めるかどうかにあった

対シナ強硬ではすぐに日米は意見が一致したものの、なかなか一致しなかったのは日本の農品目と自動車です。つまり通商摩擦が再び表面化しました。

これまで日米両国は「大人の対応」で通商摩擦が起きないように注意をはらってきました。でもそれは本音より建前を重視してきたからであり、いつかトランプ大統領のような建前を捨てて本音をぶちまける人物がでてきて通商摩擦を再燃させるのは既定事項でした。

異常に高い日本の農品目関税が米国に槍玉に挙げられるのは、遅かれ早かれいずれ必ず起こるということは以前からわかっていたことです。

個人農家と農協職員の票が減ると困る自民党所属の国会議員はいますが、以前と比べたら大幅に依存度が減りました。これは個人農家の農業人口が激減しているのだから当然です。

農協グループは、TPP交渉に参加表明した自民党を潰そうと、2013年参院選、2014年衆院選、2016年参院選と反対運動を繰り広げてきましたが、いまだに自民党政権を打倒することができていません。つまりもはや農協グループには自民党を潰す力がないということです。

2013年の参院選で農協グループはあからさまに自民党に反旗を翻したことで、安倍首相は農協グループ潰しを決断しました。そしてJA全中を一般社団法人化する法案が2015年に成立したわけです。

今回もTPPより農協にとって厳しいものになる日米FTAについては自民党の一部議員が反発していましたが、これはもはや日米FTAに反対していても世界の潮流から置いてけぼりになるだけだと安倍首相は判断し、トランプ大統領が主張する日米FTAに応えることを決断したということです。

これが今回の日米首脳会談における日本側の「みやげ」です。この決断が遅れたからこそ安倍首相は3人目の会談相手となってしまいましたが、最終的にはトランプ大統領の意向に沿う決断をしたのでトランプ大統領は非常に高いレベルのもてなしをすることになったわけです。

あとは為替レートの問題ですが、為替レートが1ドル100円を切らなければ別にいいと私は思っています。私は日米FTAを前提とした日米首脳会談は大歓迎です。