食い逃げされた日露会談、真珠湾訪問がなかったら内閣総辞職レベルの失態

日露会談はこれ以上なく大失敗で終わったといえます。自民党支持者の私でさえこれは内閣総辞職ものだと思います。

唯一評価してるのは読売新聞くらいで”北方4島で共同経済活動、平和条約へ「一歩」”と書かれています。まさに大本営発表レベルです。

一方で産経新聞は「引き分けどころかむしろ後退した」と痛烈で、左翼メディアも「国民の税金を無駄にした」という観点から叩いています。一般会計予算の半分は国債ですから、厳密に言えば国民の税と日銀からの資金を無駄にしたと言えますが、ロシアに日本の富を貢いだのは確かです。

北方領土問題はロシアから見たら不労所得

北方領土問題はロシアから見たら不労所得と言えるでしょう。経済協力すれば前向きに検討する詐欺をずっと続けていれば日本からいくらでもお金をむしり取れるのですからこんなにうまい話はありません。ロシアとしては利益を最大化するなら永遠にこの北方領土を返還しないというのが最適戦略になります。話し合い=外交で帰ってくるはずがありません。力の論理を信奉するロシアを付き動かすのは軍事力の衝突のみです。

戦争の講和でしかロシアは領土を返還しない

明治期の千島樺太交換条約で日本は樺太全島を放棄するかわりに、北方四島を含む千島列島を手に入れたわけですが、この条約をロシアがのんだのは日露間で紛争が続いていたからです。この紛争とは軍事衝突です。全面戦争ではないものの、イスラエルパレスチナ間のような断続的な戦闘が続いていたということです。

そして日本が南樺太を手に入れたのも、日露戦争で樺太を完全に制圧し、ロシアとの戦争を終わらせるために北樺太は妥協するのをロシアがのんだからです。これも日露戦争という戦争の結果でロシアが認めたということです。

また第二次世界大戦で降伏後に日本へ侵攻して南樺太と千島列島を奪取したのもまた軍事力です。

つまりロシアは軍事力で手に入らなかったり、守りきれなかったなら他国に渡してもいいという立場です。

政府高官はプーチン氏について「領土とは血で奪い、血で守るものだと考えている。中国との間で40年かけて領土を画定したのも、血で血を洗う国境紛争の末のことだ」と指摘する。(産経新聞2016年12月17日 http://www.sankei.com/politics/news/161217/plt1612170011-n1.html)

この産経の記事の通り、プーチンは話し合いなんかで領土を他国に渡すなんて考える人物ではありません。今後出て来るロシア指導者も同様でしょう。

北方四島を取り戻すには、それこそ数百年レベルのスパンでチャンスを伺うしかありません。数百年もの時間の中ではアメリカやロシアを巻き込んだ戦争がどこかで始まります。そのとき日本は米国から参戦を要望されるでしょうが、その際に「千島列島と樺太を日本領にする講和に賛同してくれるなら参戦していい」という条件を付けることです。これは第一次世界大戦への参戦を求めた日英同盟化の英国が日本に「今はドイツが持っているシナの軍港、青島を日本にあげるから参戦して欲しい」と打診してきたのと同様であり、日本は渋々引き受けて欧州まで海軍を派遣したわけです。結果的に英国の約束通り日本は青島を手に入れました。

またシナは尖閣諸島を300年かかっても500年かかっても取れればいいと考えています。別に習近平の間に絶対取ろうとなんて思っていません。常にチャンスを伺って数百年後に取れれば十分と考えているわけです。

日本も同様に、もっと長い時間軸で考えてチャンスが来たときに千島列島を取れれば十分として、それまではウクライナのように常に北方四島の領有権を主張し続けてこの問題を未解決のまま宙に浮かせておくことが重要です。決着を焦ると下手な悪い条件で決着してしまい、そうするとあとから覆すにも覆せなくなります。不確定な状態のまま維持しておきチャンスをひたすら待つ姿勢が大事なのに、安倍首相はかなり前のめりで焦っている。これじゃ失敗するわけです。

12月下旬に真珠湾訪問が無いと不満噴出で内閣支持率大幅下落確実

真珠湾訪問は良いタイミングで流れ込んできたものです。あるいは、日露会談が不発に終わった場合の保険として、あえて12月まで残しておいたのかもしれません。日本側としてはオバマ大統領の広島訪問が終わった5月下旬意向ならいつでも真珠湾を訪問するチャンスがありました。参院選直前の6月に真珠湾訪問を訪問して選挙でアピールする手さえあったわけです。

オバマ大統領の広島訪問と真珠湾訪問は完全に無関係という建前を強調したいから、先延ばしして12月になったというのはある一面では正しいと言えますが、内閣支持率を簡単にアップできるカードとして温存してきたという側面もあります。

真珠湾訪問がなかったら非常に後味悪く年越しを迎えて、来年の常会が紛糾するところでした。これまで2013年12月は靖国参拝、2014年12月は衆院選、2015年12月は慰安婦問題の合意と、何かしら成果をだして年越しを迎えています。これは年初のスタートを好調にするために必須のことです。安倍首相は日露会談を本来そうしたかったようですが、誰から見てもこんなのでプーチンが折れるわけないというのは明らかでした。真珠湾訪問という保険を残しておいて、日露会談の失敗と真珠湾訪問で差し引きゼロにした2016年末は及第点と言えます。