マティス国防長官の尖閣諸島発言はオバマ政権時と同じ 背景に日米FTA

米国のマティス国防長官が安倍首相と会談しました。毎回のごとく今回も尖閣諸島有事への日米安保適用について言質を取ったようです。

尖閣諸島は日本の施政下にある領域。日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と表明した。(産経新聞 http://www.sankei.com/politics/news/170204/plt1702040002-n1.html)

重要なことは、共和党政権になった今回も尖閣諸島を「日本が領有する」とは言っていないということです。「領有」の代わりに「施政」という文言を使っています。

「日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」という文言を最初に使ったのはヒラリー・クリントン元国務長官です。

オバマ政権1期目はまだまだシナ寄りでした。特にオバマ氏の広島訪問に最後の最後まで強硬的に反対し続けていた無能なスーザン・ライスが親シナ派の急先鋒でした。

そんな中で唯一シナへの警戒心を高めていたのがヒラリー・クリントンであり、オバマ政権2期目のジョン・ケリー氏に国務長官を明け渡す直前に、ヒラリー・クリントンは日本を単独訪問し安倍首相と会談して、「日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と明言したわけです。

これはオバマ政権1期目にしては極めて強い対シナ強硬的な発言でした。オバマ氏からしたら、「ヒラリー・クリントンは余計な置き土産を残した」と思われ、国務長官ポストを引き継いだジョン・ケリー氏も仕方なく、この文言を踏襲することになったわけです。

国務長官が代わったからといって、ヒラリー・クリントン元国務長官が日本の首相と公式の場で会談した内容を反故にするわけにはいかないからです。

私はトランプ氏が大統領に当選してくれて良かったと思っていますが、一応ヒラリー・クリントンもオバマ1期目の終わり頃には対シナ強硬派になっていたということです。

見方によっては悪しき前例を残したヒラリー・クリントン元国務長官

ですが見方によってはヒラリー・クリントン元国務長官は悪しき前例を残したと言えます。

ヒラリー・クリントン元国務長官の時点で、安倍首相との会談で「尖閣諸島は日本の領有下にある領域。日本の領有を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と発言していればその後何の問題もなかったわけです。

オバマ政権にしては「施政権」に言及しただけでも随分踏み込んだとは言えますが、今の共和党政権からしたらぬるいものです。

上院議員であり上院軍事委員長を務めるジョン・マケイン氏が「沖縄県石垣市尖閣諸島は日本が領有する領土」と発言しましたが、これはオバマ元大統領が打ち消しました。

ジョン・マケイン氏は今も上院議員として上院軍事委員長を務めています。

本来なら共和党政権になったことで、さらには海兵隊出身の元軍人のマティス国防長官なら「尖閣諸島は日本の領有下にある」と断言しそうですが、それを邪魔しているのがこれから控えている日米FTAです。

すでにトランプ政権の外交カードに使われている石垣市尖閣諸島 日米FTAを見据えた発言

トランプ大統領がTPP脱退の大統領令に署名したことで、TPPを嫌がっていた農協グループなどがぬか喜びをしていましたが、実はTPPよりも強力な日米FTAを推進することがわかって右往左往して当サイトの記事「トランプ氏が二国間自由貿易協定を表明 日米FTAはTPPよりも農協に打撃」にアクセスしに来ています。

その記事でも言及している通り、トランプ政権は尖閣諸島有事が日本のアキレス腱だとわかっているため、足元をみて「尖閣有事で日米安保を適用し助けてほしいなら日米FTAで農品目関税を撤廃しろ」と圧力をかける下地を作っています。

同様の指摘は産経新聞もしています。

一方、政権交代のたびに安保条約の確約を求める姿勢は、尖閣への防衛義務の確約が日本の弱みであるとの印象を内外に与える。米政権の受け止め方次第では、対日外交のカードとして利用される懸念もある。 トランプ氏はロシアに対し、対露制裁の解除と引き換えに、同国と核兵器の削減協定を結ぶ可能性を示唆している。今後、日米間に貿易摩擦などが生じれば、安保条約5条を「ディール(取引)」に持ち出す可能性も否定できない。(産経新聞 http://www.sankei.com/politics/news/170204/plt1702040003-n2.html)

トランプ政権は脱オバマを掲げて徹底的に「逆コース」政策を進めています。

「逆コース」というのは、共和党ブッシュ政権が2001~2009年までに築き上げたものをオバマ政権が全て破壊したので、それを必死に取り戻しているということです。

これは2012年まで日本で続いた民主党政権がやった「警察庁・公安調査庁弱体化」のような余計なことを自民党政権が徹底的に元に戻した作業と同じです。

それでも今回マティス国防長官があえて「尖閣諸島の領有権は日本にある」と言及せずに、オバマ政権と同じ「尖閣諸島の施政権は日本にある」という文言を継承したのは、この部分を外交カードにして日米FTAで米国が優位に立とうとしているからです。

そもそも農業という弱みがあるから米国に付け込まれる

そもそもここまで付け込まれるのは、農協グループの無能さによって壊滅状態になっている日本の農業が弱すぎるためです。

だからこそ米国に「尖閣諸島を守ってほしかったら農品目関税を撤廃しろ」と言われたときに、「日本の農品目は競争力がありますから喜んで関税撤廃します」と日本政府は強気に出ることができません。

実際日本の個人農家と農協は虫の息なので、農品目の関税撤廃、特にコメ関税が撤廃されたらあっという間に個人農家と農協グループは壊滅します。

仮に尖閣防衛を日本独力でやることになっても、この状況はさほど変わりません。

なぜなら、トランプ政権の自由貿易協定交渉はフェアを求めるので、「日本車の関税を撤廃して欲しかったらコメ関税を撤廃しろ」と等価交換を要求してくるからです。

もし日本車への関税をトランプ政権が上げてきたとしても40%くらいでしょうから、そしたら日本のコメ関税も40%を認めることになります。

それでも、計算すると800%近い率になっている現在のコメ関税からしたら、40%なんてあまりにも低すぎる水準です。コメ関税が現在の800%弱から40%に下がっただけでも農協グループの痛手は相当なものです。

このことから、尖閣防衛を日本の軍事力独力で行うにしても、法外に高すぎる関税で日本の弱い産業を守るのは日米FTAで限界に来ているということです。

それなら解決手段は一つであり、日本の農業を日本の自動車産業レベルで強くする、これだけです。だからこそ安倍首相と菅官房長官はJA全中潰しとJA全農潰しをやっているわけであり、さらには将来の総理大臣候補として名高い小泉進次郎議員は農林中央金庫潰しに意欲的です。

現在の農業のように”日本の弱みになっている産業”がなくなると米国に足元を見られて翻弄されることもなくなるということです。