祝!日米首脳会談で「2国間の枠組み」明記、TPPよりも農協に打撃の日米FTA交渉へ

2017年2月11日未明に日米首脳会談が実施され、共同声明が発表されました。

その中で、米国は日米FTAを推進しアジア太平洋地域の貿易推進に関与していくことが明記されました。

また驚いたことに、共同声明の冒頭で「核戦力」についても口頭発言だけでなく文書で明文化までされています。

 

日米首脳会談の共同声明は明文化され文書として残されています。それは英語と日本語それぞれで作成され、文意に齟齬がないかどうか日本政府職員が徹底的にチェックしています。

つまりマスコミの誤訳リスクなんてないので、日米首脳会談で発表された共同声明は政府が作成した日本語文書ということで、それを原典として読んでおけば間違えることはありません。

手っ取り早く読むなら産経新聞が全文を掲載しています。

【日米首脳会談】
辺野古移設「唯一の解決策」 日米共同声明全文
http://www.sankei.com/politics/news/170211/plt1702110025-n1.html

また当然ながら日本の外務省も掲載しています。こちらはPDFです。外務省が文言を調整して日本語版を作成しているわけですから外務省が掲載していて当然です。またこれは日本語「訳」ではありません。英語と日本語それぞれの言語で並行して磨り合わせているので、日本語と英語ともに原典です。

日米首脳会談 共同声明 外務省発表
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000227766.pdf

産経新聞は政府発表のものを捏造して報道したりせず、そのまま全文を掲載しているので問題ありませんが、朝日毎日東京新聞やNHKは勝手に改変捏造して報道するので原典にあたることは重要です。

共同声明に明文化された日米FTA推進

首脳会談では口頭で「確認」することもあれば、重要なことはしっかり「明文化」して文書として形で残します。

安倍首相が2017年1月下旬の訪米で日米首脳会談を行う予定だったにも関わらず、2月初旬にずれ込んだのは、安倍首相がいつまでもTPPにこだわって日米FTAに消極的だったため米国が首脳会談実施のOKを出さなかったからです。

ですが英国のメイ首脳が米英FTAを歓迎したことから、日米FTAにいつまでも反対していると世界の潮流から取り残されると安倍首相は判断し、米国がTPPの代わりに提唱する日米FTAを受け入れることにしました。

日本および米国は、両国間の貿易・投資関係双方の深化と、アジア太平洋地域における貿易、経済成長および高い基準の促進に向けた両国の継続的努力の重要性を再確認した。この目的のため、また、米国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から離脱した点に留意し、両首脳は、これらの共有された目的を達成するための最善の方法を探求することを誓約した。これには、日米間で2国間の枠組みに関して議論を行うこと、また、日本が既存のイニシアチブを基礎として地域レベルの進展を引き続き推進することを含む
(日米首脳会談共同声明全文【日米経済関係】より引用 http://www.sankei.com/politics/news/170211/plt1702110025-n4.html)

これは米国がこだわった点と日本がこだわった点が併記されています。

まずこの声明ではアジア太平洋地域における貿易のために「最善の方法を探求することを誓約」したと書かれています。

そしてその「最善の方法」の具体例は2つあります。

まず一つ目が日米FTA交渉であり、「日米間で2国間の枠組みに関して議論を行うこと」と記載されています。

これが米国側が日米首脳会談実施の条件にしてきた部分です。この部分を日本側が受け入れたからこそ日米首脳会談が実現したということです。

そして日本の役割も明記されています。「日本が既存のイニシアチブを基礎として地域レベルの進展を引き続き推進すること」と記載されており、これは紛れもなくTPPのことです。

まずこの2つの具体的は”手段”であることが重要です。”目的”は、「米国と日本がアジア太平洋地域で経済の主導権を握ること」です。

その目的のための手段として、米国は日米FTAを推進することでアジア太平洋に関与し、日本はTPPを推進することでアジア太平洋に関与すると書いてあります。

この日米FTAとTPPは排他的ではありません。日米FTAを発効させつつ、米国抜きでTPPを発効させることができます。

アジア太平洋の主導権を握る”目的”ために米国は日米FTAという”手段”を担当、日本はTPPという”手段”を担当すると役割分担を併記したのが今回の共同声明です。

農協グループが可哀想なのは、TPPは米国抜きで存続したまま、さらに日米FTAという脅威が追加入り込んできたということです。日米FTAかTPPかというどちらか1つではありません。日米FTA米国抜きのTPPという併存を狙っているということです。

これは農協グループにとって脅威であり、私にとっては歓迎できる外圧です。

TPP加盟国は多数ありますが、その中でも農協グループが最も嫌がっている国は米国であり、品目でいうと”米国のコメ”です。

TPPという枠内で終わりにしておけばコメ関税は守れたのに、米国だけTPPから離脱して米国の分だけは日米FTAという厳しいものを別途突きつけられることになりました。米国が加盟するTPPの単独発効よりも、「日米FTA+米国抜きTPP」の方が農協グループにとって壊滅的に厳しくなるということです。

今回の棚ぼたは「核戦力のコミットメント」が真っ先に明文化され文書として残ったこと

驚いたのは、共同声明の一番最初に「核」の文字がでてきたことです。

辺野古や尖閣については書かれて当然と思っていたので驚きませんが、辺野古や尖閣よりも先に「核戦力」について言及されていることに驚きました。

共同声明

 2017年2月10日、安倍首相とトランプ大統領は、ワシントンで最初の首脳会談を行い、日米同盟および経済関係を一層強化するための強い決意を確認した。

【日米同盟】

 揺らぐことのない日米同盟はアジア太平洋地域における平和、繁栄および自由の礎である。核および通常戦力の双方による、あらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない。
(以下省略)

共同声明本文が始まってから120文字後に早速、「核戦力」について触れられています。共同声明はこの後さらに2044文字も続きます。【日米同盟】の長い文章がまだまだ続き、さらに【日米経済関係】がこれまた長く続き、最後に【訪日の招待】で締め括られています。

 

これほどまで長い共同声明の中で、概要の次の第一パラグラフで真っ先に「核戦力」が出てきたのは、かなり米国としては「核」をプッシュしたいと見えます。

第二パラグラフには「辺野古基地への移設が唯一の解決策」が書かれており、第三パラグラフには「日米安保条約による尖閣防衛」が書かれています。その次の段落で北朝鮮の脅威が続き、さらに日米の軍事技術協力推進と続きます。

米国として優先順位が高く、関心が高いものほど先に言及するのは当然です。これは安倍首相が「施政方針演説」を行うときに力を入れたい重要政策ほど前の方で言及するのと同じです。

つまり米国としては日本に核を持ち込むのは全然OKなので、あとは日本政府さえ国内に持ち込んでOKと言ってくれれば米国は喜んで持ち込む準備ができているということです。

実は日本国内の法令では、憲法でも法律でも核配備を禁止していません。閣議決定だけで、米軍の核持ち込みを禁止しています。

閣議決定は平日の午前中に文言を決定したら、その日の午後にでも閣議決定できてしまいます。国務大臣だけで決められるからです。さらに言えば、郵政民営化のときのように閣議決定に反対した農林水産大臣が出てきても、小泉総理のようにその場で農水大臣を更迭し、小泉総理が農水大臣を兼務して全会一致で閣議決定したようなことすらできてしまいます。

先日マティス国防長官が来日したときに、急に「核戦力」と言い出したので一気に踏み込んできたなと思っていましたが、まさか日米首脳会談でも言及してさらに共同声明の最初の段落で明文化して文書として残すあたり今後の日米安保の論点は核に移りました。

あとは本当に邪魔しているのは閣議決定だけということになります。衆参の過半数が必要な2015年9月成立の安保法制に比べたらありえないほど低いハードルです。

日本さえよければ米国はいつでも核兵器を日本に持ち込める状態になったことで、日本が保有するニュークリア・シェアリングなんて面倒な手続きは必要ありません。単に米軍が米軍のための核兵器を日本国内の米軍基地に搬入して、爆撃機に搭載したり潜水艦に積んでおくだけです。

 

そしてこの日米首脳会談が行われたのは日本時間では2017年2月11日の紀元節です。

公明党が「一年間で最も嫌がっている日、祝いたくないのに祝日扱いなのが気に食わない日」とされているこの建国記念日という祝日に、自民党総裁とトランプ大統領がこのような共同声明を明文化し文書として残せたのは自民党支持者の快挙と言えます。