トランプ氏は、TPPよりも二国間の自由貿易協定を推進すると表明しました。
米国は現在、主要国ではオーストラリア、シンガポール、南と自由貿易協定を結んでいます。
NAFTAはカナダ、メキシコとの自由貿易協定ですが、NAFTAを解体してカナダ、メキシコそれぞれと個別に二国間の自由貿易協定を結ぶそうです。
現時点で米国が結んでいる二国間協定の中に日本は含まれていません。だからこそこれから締結させるToDoリストに日本が入っているわけです。
その理由は日本からみた二国間自由貿易協定でもわかります。
日本が最初にFTAを結んだのはシンガポールです。そしてそれはEPAに格上げされました。
なぜシンガポールとの二国間自由貿易協定を真っ先に結べたのかというと、シンガポールは国土がせまく農業が無力に等しい国だからです。水でさえ自分で賄うことができずマレーシアから輸入しているのがシンガポールです。
だからこそ日本国内の農協の力がまだそこそこあった2000年初期ですら、シンガポールとのFTAに農協は反対しませんでした。日本の農協に害のないシンガポールが日本からみた最初のFTA締結国になったわけです。
トランプ氏はメッセージのなかで「就任初日に起こせる行政府としての行動」を列挙。その一番目の項目としてTPP脱退の宣言を挙げた。そのうえで雇用や産業を米国に取り戻すため、二国間での自由貿易協定を目指すとしている。(産経新聞2016.11.22 http://www.sankei.com/world/news/161122/wor1611220010-n1.html)
このようにトランプ氏は、TPPという1つの統一されたルールではなく、各国と個別に貿易ルールを作ろうとしています。
日本と米国は軍事同盟という極めて密接な同盟国であるにもかかわらず、経済の結びつきであるFTAやEPAが未だにないのはなぜか。それは米国は巨大な農業大国でもあり、特にコメを日本に売りつけようとしていることから、コメの関税が下げられてしまうと壊滅的打撃を受ける農協が猛反発してきたからです。
ここにトランプ氏は目をつけています。日本のアキレス腱は尖閣諸島の軍事的危機だとトランプ氏周辺もよく理解していますから、ここをつついて脅せば日本は農品目の関税はいくらでも譲歩すると足元をみられているわけです。
二国間の自由貿易協定なら、米国が望む医薬品の知的財産権保護期間を長期のままで維持しつつ、自動車関税を引き下げてほしいなら、日本の800%近いコメ関税を引き下げるか撤廃するように求めてくるのが”フェアな等価交換条項”を求めるトランプ氏のやり方です。
時事通信も同様の指摘をしています。
トランプ氏の考えに沿う形で、日本と米国が2国間の自由貿易協定(FTA)を結び直す必要が出てくれば、TPP交渉以上に農産物などの市場開放を求めてくる懸念がある。
(中略)
トランプ氏は、多国間貿易協定のTPPに代わり、2国間協定に軸足を移すと明言。厳しい要求を相対で突き付けられる「日米FTA」は、日本が最も避けたいシナリオだ。
時事通信より引用 http://www.jiji.com/jc/article?k=2016112200399&g=use
このように日本は今まで日米FTAを避けてきました。コメの関税撤廃をされたら日本の個人農家が壊滅するも同然だからです。個人農家が壊滅すればそれに寄生する形の農協グループも壊滅します。
実際に米国とのFTAで農家が壊滅している国が日本のすぐ隣にあります。そのモデルケースをたたき台として日米FTA交渉はスタートするでしょう。
日本からみた二国間自由貿易協定は、経済的に大きな国としてはシンガポールとオーストラリアくらいしか現在はありません。次にEUとのEPAが入ってくるでしょうが、日米FTAがトランプ政権になって現実的になってきます。
TPPなら重要5品目を守れたのですから農協への打撃はまだ小さいのに、ここで日米FTAでコメ関税に切り込まれて日本の農協にとってはTPPよりかなり不利な協定になります。