エリザベス女王のチャイナ非礼発言の英断 英国豪州が揺れる2016年

英国の国家元首であるエリザベス2世による「チャイニーズ一行はとても非礼だった」(Chinese Officials were ‘very rude’)発言が世界中で大騒ぎになっています。

日本では保守系の産経新聞が集中的に取り上げているものの、テレビニュースではさらりと取り上げられている程度です。ですが海外ではオバマ大統領の広島訪問と並んで大々的に取り上げられています。

これはちょっとしたニュースではありません。以前皇太子さまが雅子さまについて「疲れきっている」と普段の皇太子さまなら発言されないようなことを仰られたことで騒がれた時期がありました。

今回のエリザベス女王の発言はそれを遥かに超えるものです。なぜなら英国王室が行政や政治に口を挟むのは明確に法令違反でありタブー視されているからです。

それにもかかわらず”わざと”テレビカメラに拾われるように発言をしたのはエリザベス女王があえて政治的発言をするという批判を覚悟した「賭け」にでたからとロサンゼルス・タイムズ紙は指摘しています。

 

ですがこのような端々で英王室がチャイナへの不満を表明することは1年前からありました。

  1. 習近平と握手をするときにエリザベス女王は手袋をしたまま握手をした
  2. アンドルー王子が習近平のスピーチ中に真横で頬杖をついて退屈そうな顔をしていた写真が世界各国の新聞第一面に
  3. チャイナのチベット侵略に批判的でありダライ・ラマと親交のあるチャールズ皇太子は欠席
  4. 英王室が選んだ高級ワインは1989年という六四天安門事件が起こった年のもの

これらの時点で英王室はかなりチャイナへ不満をもっていると当時から分析されていました。そして今回の大きな出来事で決定的になりました。

これらは英国特有のマイナスのリップサービスと言えます。

 

日本に対してはプラスのリップサービスをしています。あくまでもリップサービスなので、言うのはタダということで日本政府を持ち上げてるわけです。

英国の防衛相が来日したときに「日本は同盟国だ」とひたすら繰り返していました。

Anglo-Japanese Alliance(日英同盟)はすでに解消しており同盟を位置づける条約は存在しません。

正しく言うなら「英国と日本は自由主義、民主主義、法の支配という普遍的価値を共有する国」ということです。それを相当盛って発言してくれたのでしょう。

 

つまり「お金は欲しいから一応チャイナとは仲良くしている”フリ”をしているけど、ミサイル開発は日本と共同で行って軍事面では協力したい。チャイナと軍事面での交流はない。そこは理解して欲しい。」ということです。

実際に日英はミサイルの共同開発ですでに合意しています。

 

英王室としては米国との関係を良好にすべきと考えているがキャメロン政権はそうではない。キャメロン政権はお金を優先するあまり英国の品格を損なっています。

ですがキャメロン首相はパナマ文書問題で揺れています。さらにEU離脱を問う投票も実施されます。

さらに同じくチャイナ傾倒をしているオーストラリアのターンブル首相は上下院ともに解散したもののパナマ文書問題で選挙に不利と見られています。

世界各国でとても大きな変化が起きています。金融市場であったらレジームスイッチが起こってもおかしくない状態です。

戦後70年でオバマ大統領が広島を訪問するのは歴史的です。さらに60年以上英国の国家元首として即位しているエリザベス2世がこのような政治的に踏み込んだ発言を公然と行うのも初めてなのです。70年に1度という滅多に起こらないことが立て続けに起こっていることは十分な注意を要します。