やはりというか、まともな教養がある人なら誰でもわかっていた展開になってきました。
トランプ氏はTPP以上に日本の農協に不利な協定である日米FTAに舵を切ろうとしています。投資家なのですから当然です。麻生副総理はトランプ氏のことを不動産屋と呼んでいましたが、不動産屋というのは仲介業者のことです。トランプ氏は仲介業者というよりは不動産を自己資金で購入し運用する側でありバイサイドです。
そのような人で自由貿易推進に反対する人を見たことがありません。金融不動産の投資家は資本主義の権化のようなものですから自然と規制撤廃&自由貿易推進になります。
その結果、トランプ氏はTPP以上に日本にとって厳しいものを突きつける日米FTAを推進すると明言しました。
トランプ氏が選挙期間中に反TPPを叫んでいたのは選挙に勝つため さらに再交渉で他国から譲歩を引き出すため
トランプ氏は本音では自由貿易推進派です。ではなぜ選挙期間中に保護主義を唱えていたのか。そうしないとヒラリー・クリントンに勝てないからです。勝つためなら別に嘘をついてもかまいません。なぜなら米国の政治制度は日本と同じ白紙委任を採用しているからです。
そして、選挙期間中から反TPPを認知させておけば、どうしても米国にTPPに入って欲しい他の11カ国は米国に譲歩することになります。トランプ氏は「dealする」と言われ、これは日本のメディアは「取引する」と訳して報じていますが、正しくは「”引き合い”する」です。これは投資銀行と機関投資家の間で利害が対立する中で条件を決定する際にも使われます。
この手法は日本政府も使っています。安倍内閣をトップとする日本政府も「TPP再交渉には応じない」と答弁しており、議会自民党のトップの二階幹事長も「再交渉には応じない」と明言しています。
でも実は「米国が加盟してくれるのなら再交渉してもいい」と思っています。最初から再交渉してもいいなんて言ってると、そのように譲歩した点が次の中間地点になり、さらに押し込まれるからです。
ですが、米国はTPPの再交渉に応じるのではなく、日米FTAという米国に更に有利、日本の農協にさらに不利になる協定の締結にかじを切るようです。
ビル・クリントン元大統領も、オバマ大統領も、ヒラリー・クリントン元国務長官も、選挙期間中は自由貿易に反対したが就任するとNAFTA・TPPを推進
選挙期間中の反自由貿易は昔から米大統領選の常套文句です。米国の民主党は、自由貿易推進の共和党と違って自由貿易反対の政党です。その民主党に所属するビル・クリントンでさえ選挙期間中は自由貿易推進に反対しておきながら、当選して就任するとNAFTAを締結させました。
オバマ大統領も選挙期間中は自由貿易推進に反対しておきながら、就任すると1期目の時点でTPPを推進し始めました。実はこのTPPの発案には、アジアに防衛の軸足を移す論文を寄稿してアジア重視戦略を打ち出した張本人、ヒラリー・クリントン元国務長官が深く関わっています。実際にオバマ政権1期目で国務長官を務めていたヒラリー・クリントンは、TPP推進に奔走していました。
そしてヒラリー・クリントンは米大統領選で破れましたが、選挙戦中に反TPPを言っておきながら実はウィキリークスのすっぱぬきで「オバマ政権中に批准してくれて、私はタッチしないのがベスト。オバマ政権が批准しなくても再交渉すれば批准する」とクリントン氏は考えていたことがバレてしまったのです。
自由貿易推進に反対している民主党でさえこれなのですから、自由貿易推進の共和党のトランプ候補が保護貿易と言っている時点で、「こんなの嘘に決まっている」としっかりした教育を受けてきた人ならわかります。
副大統領のペンス氏は自由貿易容認派どころか推進派、商務担当のウィルバーロス氏も自由貿易推進派 幹部に反対派なし
トランプ政権の次期副大統領はペンス氏になることが選挙期間中から判明していました。
そしてペンス氏はTPPが批准できるよう根回ししていたほどTPP推進論者です。TPPは米民主党のオバマ政権が妥結させたものです。それを批准させるように働きかけるというのは、共和党の政敵である民進党を利することです。それにもかかわらず、TPPの理解を求めるために奔走したほどの自由貿易推進論者が副大統領になる、これはトランプ政権は日米FTAを推進するつもりだということです。
さらに商務長官に内定しそうなウィルバーロス氏も自由貿易推進派です。安倍首相が訪米した際に民主党陣営とはヒラリー・クリントン候補を会談する一方で、共和党陣営とはこのウィルバーロス氏と安倍首相が会談していたのです。ロス氏は知日派として知られ、安倍首相と会談した際に「トランプ氏は選挙のため表向きは強いことを言っているが、実際は現実主義者であり合理主義者だ」と安倍首相に応じていました。
トランプ氏は選挙戦と当選してからも経済政策顧問を14人起用しましたが、なんと全員が自由貿易推進派です。
この人達はTPPよりもさらに日本の農品目関税撤廃に踏み込んだ日米FTAを推進するようです。
極めつけはマイケル・フリンの就任 反チャイナ包囲網としての自由貿易推進に反対する人はトランプ政権に一人もいない
米軍で将官まで務めたマイケル・フリン氏が、国務長官、国防長官と並んで重要ポストである国家安全保障問題担当大統領補佐官に内定しました。
これは安倍首相とトランプ次期大統領の会談以上の大ニュースです。なぜならフリン氏は対チャイナ強硬派であり、オバマ政権が南シナ海で軍艦の航行しかさせなかったことを批判しており、南シナ海で戦争も辞さずという考えだからです。
フリン氏は米大統領選で多忙を極める中、投開票日直前にわざわざ来日し菅官房長官と会談したのみならず、自民党本部まで足を運んで講演までしていました。軍の専門家であるフリン氏はトランプ陣営の安全保障担当でしたから、「トランプ氏は選挙では過激なことを言っているが日米安保を反故にすることはない」と日本に代弁する役割で来日したようです。
案の定、NHKはフリン氏が対シナ強硬派であることは伝えていません。中東の介入に積極的としか書いていません。それは日本にはどうでもいい話で、すぐ隣の南シナ海にチャイナの軍事拠点空爆を含めて介入するかどうかが重要です。
トランプ氏は電話会談で4番目となった安倍首相より前に、メキシコやイスラエルの首脳と電話会談しています。シナの習が会談したのはそれよりも数日も後です。なのにもかかわらず、NHKは「トランプ次期大統領は安倍首相や習近平などと会談し」のように、なぜかわざわざ名前を出すくらいシナに注目しているのにもかかわらず、フリン氏が対シナ強硬派であることには一切触れていません。都合の悪い部分はあえて隠し通すのはさすがNHKです。
フリン氏は対シナとしてのブロック経済が重要とも進言しています。その1つが日米FTAです。フリン氏が国家安全保障問題担当大統領補佐官に内定したことで、南シナ海・東シナ海での軍拡が一気に勢いづきます。おそらく、尖閣諸島は日本に施政権があるのは当然のこと領有権も有すると明言するようにトランプ大統領に進言するでしょう。
逆にオバマ政権の2期目でこのポストを務めたのがスーザン・ライス。この人物が2013,2014年と安倍首相を悩ませ日本を害した張本人です。このライスは米中2国間重視戦略を受け入れるようにオバマ大統領にずっと進言してきました。特にそれは2014年4月のオバマ来日のときに顕著でした。しかしそれは2014年秋に共和党が上院で過半数を占めたことでブレーキがかかります。外交安全保障政策で上院共和党の意向を無視できないからです。そしてさらに世界各国が米国の静止を振り払ってAIIBに加盟するなど米国からの離反が相次ぐに至ったために、ようやくオバマ大統領は日本への接近をはじめ、対チャイナで強硬になりました。
しかし、オバマ大統領の広島訪問に最後の最後まで一貫して反対し続けていたのはまたもやこのライス補佐官だったのです。演説時間の縮小(最終的にはオバマ氏の意向で大幅延長)、謝罪的な文言が入らないよう演説内容を徹底精査、資料館の訪問時間を大幅削減させたのもライス補佐官であり、最後の最後まで日本の国益を害してきた張本人でした。
これが打って変わってマイケル・フリン氏になるのはこれ以上無い朗報だと言えます。
農協グループは2012年衆院選で自民党が大勝したときも「自民が勝利したからもうTPPは終わり」と喜んでいた
面白いのは2010年から2011年に、日本の民主党がTPP交渉への参加を検討し始めたと同時に、農協グループは総出で職員に反対署名運動をさせていました。
さらには2012年の衆院選では自民党の「聖域なき関税撤廃を前提とするならば、TPPには参加しない」というのを見て、「自民党はTPPに参加しないのか」と勘違いをし、自民党を支持して自民大勝に導きました。
そして自民党は当選直後にTPP推進派に豹変、TPP交渉に参加を表明し、その後毎月のように甘利大臣はフロマンUSTR代表と交渉し、2015年に妥結したわけです。
2012年に自民大勝したときの農協グループ職員のぬか喜びと、今回のトランプ当選でのぬか喜びは全く同じです。トランプ氏の選挙期間中の方便としての”言葉”ではなく、当選後の閣僚・事務方人事という”行動”を見れば一目瞭然です。
ヒラリー・クリントンが当選していてもTPPが批准されるのは確実だったので、米大統領選ではどちらが勝利してもTPPが批准するか日米FTA批准になり、農協グループが壊滅的打撃を受けるのは既定路線だったわけです。