安倍内閣支持率60%超 トランプ就任前の「期待」期間に解散がベスト

理屈だけで言えば安倍首相は2017年1月に衆院解散総選挙をやってしまうのが最適戦略になります。ただ、選挙では追い風という場の雰囲気があるかどうかが重要ですから、そこは2016年12月23日時点での空気を読んでという話になるでしょう。解散があるとしたら大安の12月23日金曜日です。

1月20日にトランプ大統領が誕生してしまうと、今の「トランプ次期大統領への期待」が脆くも崩れ去り株安円高になる蓋然性はかなり高いです。

そうなると安倍内閣支持率は激減します。2016年11月末の世論調査で安倍内閣支持率が60%を超えたのは円安株高が続いていることが大きいです。

安倍内閣支持率60% 年金改正法案のダメージなし

共同通信によると11月下旬の内閣支持率が60.7%になりました。直前に年金改正法が衆院委員会を大荒れで通過したので、年金改正法が原因で安倍内閣支持率が大幅下落するだろうと踏んで、安倍首相に批判的な共同通信はこのタイミングで世論調査をしたんでしょうが完全に裏目に出た形です。

おそらくあの委員会決議のときに野党がくだらないプラカードをわざとらしくカメラの方に向けていたのをみて、国民がうんざりしたのでしょう。

野党は「国民がそれをみたらどのような印象を持つか」という第三者の視点がまったく理解できないようです。

いい意味で大本営発表のツーショット写真が功を奏した

支持率が7ポイントもアップするのは滅多にありません。今回これほどアップしたのは間違いなく安倍首相がトランプ氏とニューヨークの自宅で会談したことです。

トランプ氏のマスコミ不信は安倍首相以上であり、トランプ氏はまだ大統領でないことからマスコミ締め出しをしてもかまわないので実際に締め出しを実行しました。

そのためマスコミは安倍トランプ会談を撮影することはできず、写真を撮影して公表したのは内閣広報室です。つまりいわゆる大本営発表と言えるでしょう。

とても映える写真を選び抜いて公表したと言えます。トランプ氏も安倍首相も笑顔であり、とても友好的な雰囲気が感じられる写真でした。

会談の様子をさぐれる写真が日本政府発表のものしかないのですから、国民はこの写真をたよりに安倍首相を評価するわけです。

会談内容が公開されなかったことも良い方向に働いています。具体的内容が出てしまうと日本のマスコミは反安倍政権ですから、徹底的に揚げ足を取って叩くでしょう。ですが今回は内容が出なかったので叩きようがないわけです。会談内容はわからないが、あの写真と安倍首相のコメント、トランプ氏側のコメントから判断するに、安倍首相には「おおいに期待できる」して支持をしました。

マスコミが立ち入り禁止になったおかげで、今回の安倍内閣支持率の大幅増に結びついたと言えます。

安倍トランプ会談後の円安株高もプラス

トランプ氏と会談が終わってから、それと円高是正(円安)も進んでいます。この状況を2012年11月頃の安倍首相返り咲き直前の期待相場に重ねている人は多いでしょう。

会談翌日から株安円高になっていたら「安倍がトランプ会談に失敗したせいだ」となってしまいかなりまずかったですが、幸いなことにその後も株高円安基調は続いています。まさにトランプ次期大統領就任前の「期待」相場だと言えます。

大統領就任前なら安倍首相はいくらでもトランプ氏を選挙演説で利用できる

トランプ氏が大統領に就任してしまうと、安倍首相は選挙演説で下手なことは言えなくなります。

トランプ氏の意図とは異なることを安倍首相が発言してしまったら、トランプ氏が記者会見で「それは違う」と打ち消しにきたら安倍首相は大恥だからです。

でも今はいくらでも言いたい放題です。

「トランプ氏と友好関係を築けており、次期大統領とやりあえるのは私だけです」とアピールするだけで簡単に票が稼げます。また株高もアピールできます。

トランプ氏は就任前ですから、現職の安倍首相の発言にいちいちかみついてこないでしょう。言いたい放題言える今のうちがチャンスだということです。

北方領土も「期待」だけでよし 下手な結果を出してしまうより「期待」が高まる先送りを

プーチン大統領との会談は、下手に経済協力の前倒しなんかをせずに、「北方領土に領土問題が存在することを確認し、今後も対話を継続する」だけで十分です。今回は安倍首相の地元山口県の温泉に入ってもらってそのままロシアに帰ってもらうだけでいいでしょう。

下手に経済協力の前倒し実施を確定させ、四島の帰属も共同声明で明文化できなかったら最悪です。北方領土問題は、竹島や尖閣諸島よりも圧倒的に小学校教育のおかげで広く国民に認知されています。最終的には四島返還が当然だと思っていますから、これより妥協したと見られたら逆効果です。

日本国民はロシアと仲良くしたいと思っていません。ずっと平和友好条約がなくたっていいと思っているでしょう。ビザの緩和なんてしたら治安が悪化するからむしろ要らないと思っている人の方が多いです。四島を返してくれたらロシアとの関係はもう終わり。それ以降はなるべく関わらないようにするのがベスト、というのが国民の総意です。ロシアは恐い国というイメージが強いからです。

ここを読み間違えると安倍首相は支持率を下げることになります。

来年の常会は共謀罪も配偶者控除廃止も農協改革もある 不人気物件をやる前に解散がベスト

農協グループの職員数は日本国民全体から見ればたかが知れてるので、農協改革にはむしろ賛成の国民の方がおおいでしょう。JA全中の一般社団法人化のときも世論調査では賛成が上回っていました。

問題なのは、特定秘密保護法なみに不人気とされる共謀罪。あとはそもそも反自民だらけの専業主婦層が猛反発する配偶者控除廃止の来年の常会での審議が控えてるからです。

選挙前だから150万円まで緩和して年収制限を就けるという腰の引けたものになっていますが、選挙で大勝すればこれもひっくり返ります。

それは軽減税率のときでも明らかです。議会自民党は軽減税率に加工食品は含まない方向としていましたが、政府自民党(安倍内閣)がトップダウンで、加工食品も軽減税率の対象と決め手しまいました。

本来税制は議会が主導権を握るべきものですが、政府がそれをひっくり返すことが最近はあるので、なんだかんだいって配偶者控除廃止は抜本改革になると思います。

よってこのような不人気なものを来年の常会でやってから、2017年12月に解散総選挙だと野党に叩く口実を与えてしまうことになります。それなら不人気法案を審議する前に、さらにはトランプ相場が続いているうちに解散総選挙がベストになります。

米国は政治任用が徹底しているので、米国官公庁の課長級以上がごっそり入れ替わってしまい、大統領就任後1年位はまともに行政が機能しません。日本政府との意思疎通もまともにできません。そのような不安定期に衆院解散総選挙をやるよりは、オバマ政権最終章で非常に安定していて今後のスケジュールが非常に高い確度で予見しやすくボラティリティが低い今のうちに解散総選挙をやっておいたほうが自民党にとっては「手堅い」と言えます。