某国との通貨スワップを締結するための「議論」が開始されることが決定したと本日報道されました。
議論の開始なので締結されると決まったわけではないという見方もありますが、ほぼ確実に通貨スワップ締結まで行ってしまうでしょう。
ですがこの通貨スワップは日本にとってデメリットではありません。「事実上の某国への支援」というのは正しい見方ですが、それは某国への政府への支援であり民間企業について考えると意外と日本の企業にメリットがあるものです。
通貨スワップというのは民間ではほとんど見られない 金融機関では99.9%が金利スワップ
スワップというデリバティブ取引はデリバティブの中でも最も成功した商品だと言われています。たしかにスワップというのは単純なものの、長く実務をやっていると取引の奥深さ便利さに気付かされます。
スワップ取引は民間企業にとって必要不可欠です。一つの企業の中の部署の間でスワップ取引を行っていることも普通にあります。それはそれぞれの部署の責任の所在を明確にし、どの部署が収益をあげたかどうかを正確に計測して実績評価を行うためです。
そして金融機関同士、特に銀行においてはデリバティブ取引の大半が金利スワップです。金利スワップというのは”ある特定の通貨において”その通貨の固定金利と変動金利を交換するものです。
だから円金利スワップだったら円の固定金利と円の変動金利を交換します。ドル金利スワップだったらドルの固定金利とドルの変動金利を交換します。複数の通貨がでてこないことに注意してください。もしドルや円など、はたまた某国の通貨など複数の通貨にまたがったスワップは「通貨スワップ」になり、「金利スワップ」ではありません。
なぜ民間金融機関で金利スワップが好まれるかというと、金利スワップというのは完全にフェアな等価交換という側面を持っているからです。
等価交換ということはどちらも得もしないし損もしないということです。固定金利と変動金利には優劣は存在しません。そのときどきにおいてAという金融機関は変動金利が欲しいかもしれないし、Bという金融機関は固定金利が欲しいかもしれない。それならそれらを”等価交換”すればお互いにメリットがあるだろうというのが金利スワップです。
だから金利スワップをする時点では勝ち負けは決まっていません。その後金利が下がったりすると変動金利を受けている側は損をします。逆に変動金利が上がると固定金利を受けている側は損をします。結果的には勝ち負けは決まりますが、それはあとになってからわかることです。金利スワップという取引を開始した時点ではどちらもフェアになるように条件が決定されます。時間が経ってくると勝ち負けがわかってきますが、最初は対等なのです。
ですが通貨スワップは取引を開始する時点から勝ち負けがわかっています。
通貨スワップは必ず得する側と損する側がいる
通貨スワップというのは明らかに得する側と損する側がいます。これが民間企業では通貨スワップが使われない理由です。
なぜならA社とB社が通貨スワップを締結するときに、A社がB社にドルを支払う、そしてA社はB社から南コリアウォンを貰うというものだったら、明らかにA社が損だからです。
でもごくまれですが、民間企業の間でも通貨スワップが締結されることがあります。それはグループ企業を救済するために、ドルを融通して代わりに円を貰うといった救済的な措置で行われることがあります。でもこれは身内のグループ企業を助ける目的がほとんどです。
明らかに市場で競争している競合他社に対してはそんなことは絶対にしません。つまり半導体メーカー同士が競争しているのに通貨スワップをすることなんてほぼないってことです。
だから通貨スワップは国家間の政治的決断によって行われるのがほとんど
よって通貨スワップというのは競争関係にある民間企業同士では行われません。
でもこれが国家間となると合理的な経済的メリットを度外視した”政治的決断”というものによって実現することが可能です。
事実上日本からの南コリアへのドル支援だとしても、日本の行政(内閣)がその方向に話をすすめて、国会議員がそれでOKと信任すれば話は進みます。ミクロ経済学のようにみんな我が利益のために競争しているという市場ではそんなことは絶対に起こり得ませんが、そのような合理的な判断をしないことも”国”という非民間部門の意思決定(政治)なら可能だからです。
民間企業だと通貨スワップみたいなのを連発してればあっさり潰れてしまいますが国はそうではないので実現できるという側面があります。
通貨スワップをすると日本はドル円為替介入をする口実ができて円安にできる
一応日本にもメリットはあります。それは円安にもっていけることです。
某国との通貨スワップというのは米ドルと南コリアウォンを交換する契約だということが重要です。
日本は米ドルを調達してきてそれを某国にプレゼントします。逆に某国は日本に南コリアウォンという無価値な通貨を渡してきます。
これがなぜ円安になるかというと、日本は米ドルを印刷できる米ドルの通貨発行権を持っていませんから、某国に渡すための米ドルを用意するためには米ドルを買ってくる必要があります。
米ドルを買ってくるときに代わりに支払うのが日本円です。つまり通貨スワップで渡す米ドルを用意するには、為替市場において米ドル買い・日本円売りという取引を行わなければなりません。
これを行うのは財務省です。つまり財政がこれを行います。これは為替介入と同じです。為替介入というのは財務省のお金(国庫からの予算)をもって日銀が執行します。
この為替介入をしようとすると米国がいつも口を挟んできます。実際にオバマ政権下では、日本の民主党政権であったときに1ドル70円近辺で財務省が介入しましたがそのときもオバマ政権は「支持しない」と不満を口にしました。それ以来日本は為替介入をやっていません。
これくらい為替介入というのはやりづらいものです。
でも通貨スワップという名目なら、「通貨スワップでは米ドルが必要だから円を売って米ドルを買います」ということが平然とできます。
以前の通貨スワップに米国が反対したのはドル高になるのが嫌だから
昨年終了した従前の通貨スワップを締結したときには米国のブッシュ政権は猛反対してきました。
この理由は単純です。単に日本がドル買い円売りの取引を行うことでドル高になることが米国は嫌だからです。米国にも製造業があるのでドル高は不利益だからです。
米国はそういった単純な理由で、日本と某国との通貨スワップに反対してきました。何も日本のためを思って米国は反対してきたのではありません。米国にとってデメリットしかないからです。
通貨スワップは南コリアウォン高にもつながる
通貨スワップはドル高円安に繋がるのは先程書いたとおりですが、実は南コリアウォン高にも繋がります。これも日本にとってはメリットです。なぜなら某国は日本の産業をパクって経済成長してきたので、日本と産業構造がもろかぶりです。だから南コリアウォンが高くなると貿易で不利になり南コリアの民間企業は打撃を受けます。
なぜそうなるかというと、某国は日本から受け取った米ドルをそのまま外貨準備にする手もありますが、それを取崩して米ドル売り・南コリアウォン買いという介入をすることがあります。なぜなら南コリアウォンというのは非常にもろい通貨であり、そのせいで1997年に通貨危機に陥ったからです。
某国からするとはした金の南コリアウォンを日本にプレゼントするかわりに、それ以上の実力の米ドルを得ることができます。これは南コリアウォンの実力以上の米ドルを得ることができることになり、それは南コリアウォンが強くなる=高くなる方向に力が働くことになります。
さらには積極的に南コリアウォンを買って米ドルを売るという為替介入をしてくれたならさらに日本にとってはメリットになります。
つまり通貨スワップというのは基本的に某国の南コリアウォンを高くする方向に働きます。これは日本の製造業にとってはメリットだということです。
どちらかというと、日本政府としては米ドルを手放して、使えない南コリアウォンが入ってくるわけですから政府としてはメリットがありません。ですが日本の民間企業にはメリットがあります。
一方で某国からみると、某国の政府としては米ドルで外貨準備高を大きくできるから通貨危機に陥るリスクを回避できるので政府にはメリットがありますが、某国の民間企業にはウォン高の圧力が強くなりメリットがありません。円安になることも同じく某国の民間企業にはメリットがありません。
このように通貨スワップというのは円安・南コリアウォン高という一応日本にとってはメリットのある効果があります。
デメリットは理屈では説明できないものになる
ですが見えないデメリットがあります。
日本は第2次世界大戦の大東亜戦争までは全戦全勝の負け知らずの国でした。第2次世界大戦でさえ対米戦争以外では全勝していたのです。
でもなぜ負けるようになってしまったか。それは日露戦争後にコリアを救済する目的で併合してしまったからだと言われています。
そしてコリアを手放してから日本は高度経済成長期に入り大きく伸びています。
チャイナの習近平も2013年から某国とべったりしたせいで経済が失速してしまいました。某国をつっぱねていた胡錦濤時代のほうが景気はよかったのです。
そしてTHAAD配備など某国と密接な関係を維持している米国も最近低成長で悩んでいます。さっさとドル金利を上げたいのにいっこうに経済が上向かないから何度も見送りをしています。
このように某国と関わった国は没落するという歴史的な事実があります。
元農水省職員の林雄介氏は「疑似科学」と表現していますが、確かにこれを科学的に証明することはできません。せいぜい有意水準5%で統計的に有意と結論付けることができるくらいでしょう。
ですがこのように理屈では説明できないものが世の中には存在します。私が上述してきた為替にかんすることは”理屈”分野の話です。このような理屈の話はたとえ朝日新聞でも納得せざるを得ないでしょう。
ですが理屈では説明できない疑似科学は絶対に朝日新聞などは首肯しません。金融市場に携わっている人は「あまりにも利益を上げすぎているディーラーがいると周囲は警戒する」ということを経験的に知っています。つまりあまりにも利益を上げ続けているとそのしっぺ返しがこわいことを経験的に知っているのです。これは理屈や科学的に説明できるものではありません。金融市場においては世の中そういうものだという経験則です。
同じく某国の法則についても信じている金融市場関係者は多いです。ジンクスやアノマリーを信奉する人達ですから、こういったことには敏感です。
今これから株式市場でブルにポジションを持つのは危険であり、ボラティリティが上昇することを織り込んでオプションの売りも控えておいたほうがいいでしょう。