任天堂がファミコンのソフト30作をROMに納めた小型ゲーム機を発売することを発表しました。
なかなかおもしろい企画であり、そのようなゲーム機が流通すること自体は私も歓迎しています。
ですが、新たなゲームを生み出さずに過去に作成されたゲーム資産を使いまわずことで延命している日本のゲーム産業を憂慮せざるを得ません。
著名ゲームを入れすぎると高価になりすぎるためほどほどになっている
まず今回発表されたミニファミコンに搭載される30作のゲームを論評してみます。
これらはあとから追加することはできないので、この30作の中に価値を見いだせるかどうかがこのミニファミコンを買うかどうか判断するポイントになります。
まず任天堂の作品では、スーパーマリオブラザーズ、通称マリオ1があります。
あとはマリオ3、マリオUSA、星のカービィ夢の泉の物語、ドクターマリオなど。
他のメーカーではFF3があります。FF1,2がないのは残念です。
そしてドラクエは一作もありませんでした。
ロックマンも一作しかなく、私としては少し迫力不足です。
他にはメトロイド、グラディウス、悪魔城ドラキュラ、魔界村、ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会などはビッグタイトルです。
なぜあえてもっと多くのソフトを搭載しなかったのかというと、容量の問題ではなくライセンス料の問題でしょう。
任天堂のソフトだけならまだしも、スクエアエニックスやコナミのゲームとなると、さすがに30年前のゲームとはいえ無料で使わせてくださいなんて言えません。当然お金を取ります。
だからあまりにもFFやドラクエのようなビッグタイトルを全部入れてしまうと、ミニファミコン本体の価格がありえないほど高くなってしまうことから、FFは1作だけのように絞ったのでしょう。
マリオ、ドンキー、カービィ、FF、DQ、MGS、ストリートファイター すべて90年代以前のゲームシリーズ
現在でも続編がでているマリオやドンキーカービィや、ファイナルファンタジー、ドラゴンクエストなどのシリーズは80年や90年代から既に存在しているものです。
つまり過去作り出した遺産に頼る形で現在の日本のゲーム産業というのは成り立っています。
まったく新しいシリーズで成功したのはSplatoonくらいでしょう。
米国はThe last of US、Unchartedなど2000年以降も名作を生み出している
一方で米国のゲームメーカーはThe Last of USやUnchatedシリーズなど、2000年以降に作られた新しい作品にも関わらず世界中で支持されている名作を生み出しています。
日本のゲーム会社というのはどちらかというと、ファミコンのようなしょぼい性能の範囲内を前提として、その中で最大限おもしろいものを作るということを得意としていました。
ですが今は性能の制約がないわけですから、作りたいものをどうぞ自由に存分に造ってください、ということになっているわけです。
そうすると日本のゲーム会社は困ってしまうようです。なんでもしていいよと言われると逆に何をしたらいいかわからなくなるタイプです。
そういうときに米国の会社は強く、壮大な構想をつくってそれを高性能なゲーム機で実現してしまうということを成し遂げてしまいます。
マリオカート8もマリオメーカーも過去作品の焼き直し 長期的には限界あり
当時子供だった年齢層が現在20代以上になっているため、社会人としてお金を稼ぎ出しています。その層の購買意欲があるのなら、昔のゲームを焼き直ししたマリオメーカーなども売れるはずです。
ですがこのようなことは長続きしません。世代は交代していくものだからです。
現在のゲーム業界がやっていることは、日本の財務省の戦略とまったく同じです。
日本の財務省は日本をこれ以上経済成長させずに、すでに稼ぎ終わった富をうまく削って生きていくことを前提として考えています。そのためには消費税などの増税が必要だという主張です。
この財務省の考えとは対照的なのが、経済産業省や安倍首相の考えであり、減税して日本の経済を成長させていく、新たにものを作り出していくというのが経済産業省の考え方です。
どちらかというと今の日本のゲーム業界というのは財務省的発送であり、すでに昔つくったファミコン、スーファミ時代のソフトという遺産を切り崩しながらなんとか今後も延命していくという戦略をとっています。何か新しい作品を生み出してやろうという気概はもう日本のゲーム会社にはありません。
もちろん私は経済産業省のように新しいゲームシリーズを開拓していってほしいと思っていますが、アンチャーテッド4のような作品を見せられたら相当難しいハードルだと言わざるを得ません。