本サイトでは何度も「経済と軍事(安全保障)は一心同体」だと記載していますが、それによって大きく利益を挙げられるチャンスが欧州でやってきそうです。
トランプ次期大統領は「EUがバラバラになろうが知ったこっちゃない」と発言しました。
最近のインタビューでは、ドイツのメルケル首相による難民受け入れを「不法者を全て入国させた」と批判。北大西洋条約機構(NATO)は「時代遅れ」で、欧州連合(EU)が「バラバラになろうが、団結しようが、私にはどうでもよい」。(産経新聞2017年1月18日 http://www.sankei.com/world/news/170118/wor1701180042-n2.html)
まず経済同盟としてEUがあります。そして同時にNATOという集団的自衛のための軍事同盟があるわけです。EUとNATOの違いは、米国はEUに加盟していないもののNATOには米国が加盟しているということです。
だからこそトランプ氏は、EUが瓦解している以上NATOなんて不要だと言っているわけです。経済としてのEU、安全保障としてのNATOのどちらでも一方が崩れたらもう片方が存在している意味がありません。
NATOが弱まると欧州で再び西側と東側の戦争
NATOはロシアに侵攻させないために存在しています。英国、フランス・ドイツといった国はロシアに侵攻する気は全くありません。つまりNATOは積極的に戦争するためのものではなく、好戦的なロシアに対抗するためのものです。
このNATOが弱体化すると喜ぶのは紛れもなくロシアであり、ロシアと地理的に近いポーランドやドイツはまたかわいそうなことになるでしょう。
陸続きのフランスも厳しくなります。
唯一英国だけが島国であり、そう簡単には英国を陥落させることはできません。
このように英国はロシアから離れているから、ドイツやフランスほどEU崩壊に関して切迫感がないわけです。英国からみたらEUやNATOなんて他人事とも言えます。
キーポイントはドイツがロシア側につくかフランス側につくか
ドイツがロシア側につくと英国にとっては厳しくなります。
ドイツとフランスの境界が戦地となり、第一次世界大戦のときでさえ英国はドイツ空軍に空爆されましたから、また英国本土も被害を受けるでしょう。
ですが、これは日本にとっては好ましいことです。
日本は第一次世界大戦のとき日英同盟を根拠として武器弾薬を英国に売りまくり大儲けをしました。
もう一つ、もしドイツがフランスと英国側についてロシアと対峙してくれるなら、英国自身もうまみを享受できます。
この場合英国は、朝鮮戦争における日本のようなうまいポジションを占めることになります。
ドイツ・フランスあたりでドンパチやってくれている間に、英国はひたすらフランスを支援して儲けるといった構図です。
日本は早期にフランスと英国と物品役務相互提供協定(ACSA)を結び準同盟国になり戦争特需の恩恵を得る
日本は2017年1月にはフランスの防衛大臣・外務大臣と会談し、物品役務相互提供協定(ACSA)の締結へ向けて交渉を開始することを決定しました。締結に至れば、オーストラリアと同じようにフランスが日本の準軍事同盟国になります。
物品とは武器弾薬のこと、そして役務とはすなわちサービスであり、軍艦への給油活動や軍人の救出活動、哨戒活動による敵艦の情報提供などが挙げられます。
これは武器輸出三原則を見直したことと、集団的自衛権行使を可能にしたことでできるようになったことです。
実はあれだけ「歯止めをかけた」と公明党が豪語している集団的自衛権の行使容認の閣議決定と安保法制ですが、安保法制で集団的自衛権を日本が行使できるようになったからこそ、このACSA交渉によってフランスや英国などの準軍事同盟国を増やす流れが加速しています。
たとえ日米同盟やACSAのような準軍事同盟がなくとも、集団的自衛権は行使できます。菅官房長官も「集団的自衛権を行使し日本が防衛することになる緊密な国には、日本と国交のない国も含まれる」と答弁しており、別に国交や軍事同盟といった条約は必ずしも必要ないわけです。
この菅官房長官の答弁は台湾国を念頭に置いた発言ですが、日本が集団的自衛権を行使して防護する対象としては英国やフランスも該当します。
それならば日本がまだ国家として承認できていない台湾国より先に、交渉できる英国フランスとACSAを前もって締結しておけば集団的自衛権の行使にスムーズに入れるというわけです。
つまり日本としては武器輸出三原則によって武器弾薬を提供するのみならず、集団的自衛権の行使によって英海軍やフランス海軍の艦艇に給油活動を行うことができます。もちろん必要となったら対艦ミサイルなどの火器も使用可能です。
この欧州戦争のチャンスを逃さないように、日本は英国とも物品役務相互提供協定の交渉に入り英国と準軍事同盟を結ぶことが必要です。米国と同じような軍事同盟レベルは要りません。日英同盟は完全な軍事同盟でしたが、日英同盟を米国に破棄された過去があるため、英国とは準軍事同盟のACSAで十分です。
フランスとの交渉は2017年1月に始まり、英国とのACSA交渉は安部首相が集団的自衛権の行使容認の閣議決定をした直後の2014年から始まっています。
朝鮮戦争のように日本がボロ儲けできるチャンスがすぐそこにあるわけですから、日本政府には早期に英国と物品役務相互提供協定を結び大きく利益を得る下地を作って欲しいと思います。