佐川前国税庁長官の証人喚問は安倍政権・自民党にとってプラスになる 佐川元理財局長から上の事務次官や麻生大臣に責任が及ばぬように佐川氏が責任を一手に引き受ける人物

国税庁長官を先日辞任した佐川宣寿氏を国会で証人喚問することが決定しました。

私が2017年3月13日に書いた記事でも指摘しましたが、佐川氏を証人喚問することによってむしろ安倍政権や自民党にとって相当プラスの結果をもたらすと予測しています。

佐川元国税庁長官が辞任を表明したのは、近畿財務局の職員が自殺したことが判明した直後でした。

この事実から当初より私は、この佐川氏は国会において証人喚問されても決して自己弁護はせずに、一切の責任は当時理財局長だった佐川氏にあるとすべての責任を背負う旨の発言をし、今回の決裁後文書書換え問題の責任を元理財局長である佐川氏のところでせき止め、財務省事務次官や財務大臣である麻生氏に責任が及ばないようにするつもりであると予想しています。

理財局長時代にケチが付いても国税庁長官にしてくれた首相官邸に佐川氏は恩義を感じている

佐川氏の独断で近畿財務局職員に文書書換えの命令をしたと正直に証言してしまえば、ほぼ間違えなく佐川氏は刑事上の罪に該当してしまうと思います。

しかし佐川氏は2017年に整合性のとれない国会答弁をしても、首相官邸から国税庁長官という財務省事務次官に次ぐレベルのポストを拝命できました。

1年の任期を満了することはできなかったが、厳しい時期でもマスコミから守るため首相官邸が配慮してくれた

佐川氏が国税庁長官に就任した後も、就任時の記者会見を開かなかったり、国会で野党の追求の矢面に立たせないなど、首相官邸は佐川氏をしっかり守り続けました。

残念ながら1年という任期を満了することはできませんでしたが、辞任するまでの間、マスコミなどからなぜ国税庁長官をかくまうのかと批判されながらも、最後の最後まで守り続けた安倍内閣に対して佐川氏は恩義を感じています。

マスコミの妨害を避けるために自宅送迎をする配慮、またホテル泊からの出勤を容認する配慮など首相官邸は佐川氏を守ってきました。半年以上務めることができた上に自己都合退職(懲戒免職ではない)なのでしっかり退職一時金が支給されます。

これは任期の定めのない常勤職員(正規職員)や任期の定めのない常勤従業員(正社員)として組織で働いている人ならよくわかると思います。

会社は正社員については徹底的に守ってくれるものです。

非正規で働いている人からすると、国会答弁で虚偽答弁に近いことをしたようなケチがついた人物を国税庁長官に任命するなんて全く考えられないでしょう。

しかし首相官邸はしっかりいままでプロパー(生え抜き)として財務省職員として身を粉にして働いてきた佐川氏を国税庁長官というポストで報いました。

そして佐川氏はそれについて恩義を感じています。国会で苦しい答弁をしてしまったにもかかわらず、しっかり国税庁長官という出世レースのゴールに近いポストを渡してくれたからです。

国税庁長官辞任は首相官邸からの更迭(引導渡し)ではなく近畿財務局職員の自殺を受けて自発的に佐川氏から自己都合退職した

そして重要なことは、佐川氏は安倍政権から引導を渡されたのではないということです。つまり更迭ではないということです。

佐川氏は自発的に国税庁長官を辞しました。佐川氏自らの申し出による自己都合退職です。

できれば2018年夏までの1年間の国税庁長官任期を満了したいと佐川氏本人も願っていたはずですが、近畿財務局の職員が自殺したことから自ら辞職することを願い出たのでしょう。

近畿財務局に対して決裁後文書の書換えを命じたのは間違いなく佐川元理財局長ですから、自らの命令のせいで命を絶った職員が出たとしたらまともな感性を持つ人間だったら自発的に辞任します。

この「まともな感性」を持っていないのが、後でも少し触れますが、文部科学省事務次官を務めてガールズバー問題と天下り斡旋で辞任した前川喜平です。

我が身大事の財務省職員だったら決裁後文書書換えを命令するなどのハイリスクな対応はしない

国の職員というのは減点方式です。地方公務員でも同様だと思います。

新卒で任用された時点が100点満点で、そのあと何か不手際がある度に減点されていきます。

そのため普通の国の職員ならば自己保身を最優先します。

たとえ内閣総辞職しようとも国の一般職職員は絶対に辞職することはありません。身分保障がされてないと行政の中立性が担保できないからです。

特別職職員も一度任命されれば1年はそのポストで働き続けることができます。

もし仮に、佐川氏が虚偽答弁をせず、さらに文書書換え命令もしていなかったとしたら、それで痛手を被るのは財務省職員ではなく安倍政権です。

せいぜい安倍内閣からの反感を買って人事上不利益になるくらいです。

人事上不利益になっても刑事罰を受けるわけではないのですから、「我が身大事」の一般的な国の職員だったら決裁後の文書を書き換えるなんて下手したら刑事罰を受ける無謀なことなんかしません。

しかし佐川氏はその危険な手段を取りました。かなりのハイリスクな行動を取ったことになります。

これはすなわち、佐川氏は「我が身大事」よりも、揚げ足を取って印象操作をして「安倍おろし」を執拗に画策する野党に余計な材料を与えないために、近畿財務局が作成した文書から文言の削除を命令したわけです。

つまり佐川氏は安倍政権を今後も末永く存続させるために、自らが刑事罰を受けるかもしれないというリスクを踏まえた上で、あえてそのような危険な行動にでたことになります。

この時点でこの佐川氏は利己的ではなく利他的な珍しい国の職員だということがわかります。

もし仮に佐川氏が文部科学省の元事務次官前川氏のようなキチガイ人物だったとしたら、たとえ近畿財務局の職員が自殺しようとも辞任する素振りも見せることはなかった

2017年の加計学園問題において、既に文部科学省事務次官を辞職した民間人の立場でありながら首相官邸に牙をむき続けた前川喜平という人物がいます。

首相官邸から風俗への出入りを指摘され、自らのキャリアを傷つけられたということで安倍内閣を逆恨みしていました。

この件で首相官邸を恨み野党に協力していたという格好です。

このような自己の利益で逆恨みしているような人物は、たとえ文部科学省職員に自殺者が出ようと平然と事務次官を続けていたでしょう。首相官邸が引導を渡してようやく辞任したのが前川喜平です。最後の最後まで事務次官というポストにしがみついていました。

その前川喜平とは全く異なり、佐川氏は首相官邸に迷惑をかけたくなかったのでしょう。

その意思は私でもわかるくらいですし、当然安倍政権もわかっていたことは想像できます。だからこそ最後の最後まで佐川氏を守り続けたことになります。

本当は任期満了まで守り続けるつもりでいましたが、近畿財務局職員の自殺を受けて佐川氏が自ら辞職する道を選びました。まったく前川喜平と正反対の人物であることが、証人喚問することで佐川氏は責任を背負うから安倍政権や自民党に痛手はないと判断している理由です。

佐川氏は自己弁護をせず、すべての責任を元理財局長である佐川氏の部分でせき止めるため、今回の文書書換えの一切の責任は自身にあると証人喚問で明言する

佐川氏が務めていた理財局長の上には事務次官がおりその上に麻生大臣がいますが、決裁後の文書書換えを佐川氏が独断で近畿財務局に命令し、その事実を事務次官に報告していなかったことが証人喚問で明らかになれば、すべての責任は理財局長だった佐川氏にあることになります。

事務次官が知らなかった以上事務次官の責任にもなりませんし、その事務次官から報告を受ける麻生大臣も当然知ることはありません。

佐川氏は自らが事の発端であることを証人喚問で強調し主張すると思います。そして最終責任者が佐川氏自身になるような答弁をすると考えられます。今回の件の責任を元理財局長だった佐川氏のところでせき止めて、そこから上に責任が及ばないようにするということです。

そうしてしまうと佐川氏は刑事上の罪が言い渡される確率が高くなりますが、国税庁長官という役職にい続けられるように守ってくれた首相官邸への恩義を返すためにまともな答弁をするのだと予測しています。

当事者の佐川氏がそのように言う以上、いくら野党が追求しようとも「私がすべてやった」と佐川氏が言えばそれ以上何も言えなくなります。おそらくそれを佐川氏自身も狙っており、佐川氏の証人喚問は安倍政権と自民党にとってプラスになる、と私は判断しています。