安倍首相が「敵基地先制攻撃」能力検討、自公連立解消へ新たな火種

安倍首相が2017年2月14日の衆院予算委員会で「敵基地先制攻撃能力の検討」について言及しました。さらに2017年2月19日にはNHKの番組で高村正彦副総裁も「敵基地先制攻撃能力」に言及しました。

2016年に改正安保法制が施行されましたが、次は「敵基地攻撃」と「先制攻撃」が論点になってきています。

今でさえ自民との隙間風に悩まされている公明党にさらに難題が降り掛かってきました。

 「日本が攻撃される前に敵ミサイル基地を破壊」とはつまり先制攻撃のこと

先制攻撃は正確に言うと先制的自衛権の発動ですが、実はこれは現在の日本国憲法でも、安保法制が成立する前から既に日本が行使できる権利です。

先制攻撃をするための要件は3つあります。先制的自衛権は国際法でどの国にも保障されている権利なので、以下の3要件を満たせばOKです。

1 急迫不正の侵害があること(急迫性

2 他にこれを排除して、国を防衛する手段がないこと(必要性

3 必要な限度にとどめること(均衡性

どこかで見たことのある文言ですが、これは実は日本の集団的自衛権の行使要件と同じです。

日本以外の国では集団的自衛権の行使には、上の3つのうち2「必要性」と3「均衡製」しか要求されません(あとは他国軍からの援助要請が必要)。米国を含めて他の国は集団的自衛権の行使に1「急迫性」は必要ないのです。

ですが日本の集団的自衛権行使には安保法制によって1「急迫性」も必要になりました。

だからこそ公明党の山口那津男代表は「歯止めをかけた」と言っているわけですが、どのみち先制攻撃をするためには1の「急迫性」がないとダメなので、
米軍と一緒に集団的自衛権の行使&先制攻撃をするには1の「急迫性」が必須要件になります。

なので実際は大した歯止めになっていないのが現実です。だから当サイトで何度も記載しているように、公明党が言う「歯止めをかけた」は嘘なわけです。

むしろこの「歯止め」が、上の3要件の1の「急迫性」だったのは逆に良かったと言えます。日本が集団的自衛権を行使できる状態になったときには、自動的に先制攻撃もできる要件もクリアしている状態になります。

つまり、何の法改正も必要なく日本は先制的自衛権を発動し先制攻撃をできます。

では今回の安倍総裁や高村副総裁の「先制攻撃発言」で何が問題になっているかというと、「権利があり法的にもOKだが、実際に攻撃する武力的能力がない」ということです。

あとは「火力」だけが揃っていないということになります。先制攻撃のための武器がないわけです。

日本維新の会、片山虎之助共同代表は自民に賛同

自民党の補完勢力である日本維新の会の片山虎之助共同代表は、自民党の「先制攻撃能力保有論」について賛同を表明しました。

日本維新の会の片山虎之助共同代表も番組で「敵基地攻撃は憲法上含めていろいろ問題があるが、検討を始めてもいい」と同調した。その上で「検討を始めることが(北朝鮮の核・ミサイル開発への)圧力になるかもしれない」との認識を示した。(産経新聞 http://www.sankei.com/politics/news/170219/plt1702190013-n1.html)

先制攻撃能力を持つことが北朝鮮への圧力になるかもしれないとまで言っています。さすがに北朝鮮の名前を出されたら、北朝鮮を擁護する方向へ持っていく政党は袋叩きにされること必至ですから、「先制攻撃は不要」と反論できなくなります。このような軍拡論においては北朝鮮の脅威論は利用価値があります。

「敵基地先制攻撃能力保有には反対」と明言できなかった公明党の山口代表

高村副総裁の発言に対して、公明党の山口那津男代表は反対を表明することができませんでした。

一方、連立を組む公明党の山口那津男代表は「敵基地攻撃能力は米国しか持っていない。日本が攻撃能力を具体的に検討する計画がない中で、ミサイル防衛システムをどう日本にふさわしいものにするか、米国との役割分担を高めることが重要だ」と述べるにとどめた。(産経新聞 http://www.sankei.com/politics/news/170219/plt1702190013-n1.html)

2009年以前の公明党なら「敵基地攻撃能力」の保有には「断固反対」と真正面から反対していました。

なのに今回は真正面から反対を表明していません。日本維新の会の片山恭同代表が「自民が言う敵基地攻撃能力検討に賛成」を発言した直後で、「公明党代表として反対」と言ってしまったら、ますます公明党が自民党から遠ざかって民進党・共産党の補完勢力になるイメージがついてしまうからです。

公明党は既に教育無償化において民進党・共産党の補完勢力になっています。「公明党が”教育無償化”に必要な憲法改正に反対 ついに民進共産の補完勢力入り 」に掲載した通りです。

具体的にはトマホーク巡航ミサイルを保有するかどうか

敵基地先制攻撃のために一番簡単に導入できるのがトマホークミサイルです。

ちょっとした改修工事でイージス艦の垂直発射セルにトマホークを設置できるようになります。イージスシステムを搭載していなくても、単に発射するだけなら他の艦でもできます。誘導はイージス艦に任せればいいだけです。

次に簡単なのが爆撃機の保有です。もともと旅客機というのは爆撃機の爆雷の代わりに旅客を乗せるようにしただけなので、三菱重工が旅客機を造っていたり、川崎重工がP1哨戒機を造っている時点で爆撃機は簡単につくれます。

ただ爆撃機は敵国の領空まで入り込むわけですからかなりハイリスクです。それなら遠くから巡航ミサイルをぶっ放している方が楽です。

最も面倒なのが固定翼機発艦型の正規空母の保有ですが、私は正規空母を作る資金があるなら潜水艦と駆逐艦を大量に造ったほうが仮に損害を受けても全体を一気に失うわけではないのでメリットが大きいと思っています。

 

おそらく、今後の敵基地攻撃能力の議論で中心となるのは「巡航ミサイルのトマホークを持てるかどうか」です。

トマホーク保有にずっと反対してきた公明党からしてきたら、トマホーク保有になったらメンツを潰されたも同然です。公明党はシナと同じですからメンツにこだわります。

巡航ミサイルは水面ギリギリを低空かつ並行に進んでいくのでレーダーで捕捉しずらく、迎撃がかなり困難になります。

つまり迎撃ミサイル技術が遅れているシナや朝鮮半島の国からしたら「巡航ミサイルを撃ち込まれたら負け」であり、逆に迎撃ミサイルの共同開発で最先端を行っている日米からしたら「巡航ミサイルを撃ったもん勝ち」です。

イラク戦争では開戦1日目で米軍がイージス艦からトマホークをイラクの発電所や管制塔に撃ち込んで圧倒的優位に立ちました。トマホーク巡航ミサイルを保有し護衛艦に載せることによる日本の敵国への威圧感は計り知れません。

トランプ政権が日米貿易摩擦解消のためにトマホーク購入のノルマを課してきたら日米双方にメリットのある事態になります。THAADミサイル購入と並んでトマホークミサイルには注目です。